喫茶だんだん

 
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 8年前のことで記憶がぼんやりしていますが、鳥取、島根、山口を2泊3日で旅しました。米子はほんの半日ほどの滞在でした。
 宿へ向かうため夕暮れの町を駅前から歩き、賑やかな繁華街を抜けて川沿いにある静まり返った商店街を歩きながら、昼間の風景を想像し、翌朝には町を経たねばならないことを残念に思いました。
 駅前に着いたとき店じまいの準備をしていた喫茶店があったので、明日の開業時間を尋ねたところ「七時からです」という返事だったので明日の朝寄りますねと言い、その場を後にしました。
 翌朝7時、町はまだ静かで殆どの店が閉まっていました。「本当にこの時間から営業しているんだろうか」と多少不安になりながらも店へ向かうと、店内は明りが点いていました。
 店の人もこちらの顔を覚えていて、「土曜日で開店がいつもより遅いのに忘れていて・・・わざわざありがとうございます」と言って下さいました。わざわざ平日通りの時間に店をに開けていてくれたようです。
 外観から想像したのと違って内装は手前にカウンター席、その他は四人掛けのダイニングテーブル位の高さの机と椅子が配置されたこじんまりした店で、食堂の雰囲気がありました。定食類のメニューが充実しているので尚更そう思ったのかもしれません。
 「昨晩はどちらでお泊まりに」と訊ねられたのでホテル名を伝えると、「そんないい処に泊まったのに、そちらでモーニング食べればよかったのに、申し訳ないです」とまで言います。約束を破らずに来てよかったと胸をなでおろしました。
 しばらくしてから木のトレイで運ばれてきたモーニングセットは、トースト、目玉焼き、サラダ、味噌汁とコーヒーでした。
 前日は境港へ行ってきたことを伝えると「夏場は境港でアルバイトしていたんです」とのこと。数カ月前まで水木しげるをモデルにしたNHKの連続テレビドラマを放送していたので、ドラマが終了しても記念館等は混雑していたと盛況ぶりを伝えると「まだそんなに混んでいるんですか」と驚いた様子でした。
 お代を払い店を出た後、後ろから店の人が追いかけてきて、「気をつけてね、だんだんね~」と言い、抹茶飴の入った袋をお土産に頂きました。NHKのドラマの放送中、何度となく耳にした「だんだん」(ありがとう)でした。

軽食喫茶 蕗
鳥取県米子市万能町
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# by matsutakekissa | 2018-07-07 23:57 | Trackback | Comments(0)

交叉点の喫茶

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入谷の朝顔まつりが近いので、会場近くの喫茶店について書きます。
  
 言問通りと金杉通りの交叉点にあるマンション2階の「喫茶室岡埜」は、普段は休業していますが、朝顔まつりの期間中のみお店を開けています。10年ほど前までは通常営業を行っていたそうです。昨年は営業中の状態を確認できていませんが、今年もお店を開けていてほしいなと思っています。営業期間中は置き看板の覆いが外され、祭りの提灯がバルコニーに飾られ、休業中だったのが嘘のようでした。
 喫茶室は1980年頃の創業だそうですが、元々この地(旧下谷区坂本町)で和菓子店を営業していたこと*をお店の方にお伺いしました。喫茶室のメニューはドリンク数種と焼き菓子のみのシンプルな構成で、特に注文を受けてからつくるくずきりが人気らしく、数年前に訪れた時には何名かのお客さんが注文していました。
 店内は肘掛けの籐椅子が配置されゆったりした雰囲気、電話ボックスがあるのが80年代の喫茶店らしいです(現在は使われていません)。屋号が印刷された短冊型メモ帳が店内で販売されていたので購入しました。

喫茶室岡埜
東京都台東区根岸1丁目
※数年前の朝顔まつりでは朝9時から夕方6時頃まで営業していました。
*お店の方には詳しく訊ねていませんが、上野の岡埜栄泉と同じ経緯で暖簾分けした和菓子店と思われます。

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 もう1軒は喫茶室岡埜から金杉通りを北上した交叉点にある「ジァン」です。マスターから話を伺ったところ、若い頃に10年間ほど喫茶店を営業し*、バブルの頃に店を畳み別の仕事をしてリタイア後、元店舗に手を入れ2013年より営業を再開したそうです。
 居間のあった場所をぶち抜き、手洗いを移動させ、以前より店内が広くなったとのことで、外観と比較し店内が広く感じました。家具などは新たに買い揃えたようで往時の備品はあまり目につきません。場所がよいので移動の途中に立ち寄る若者から近所の老人まで様々なお客さんが出入りし、サッと帰る人もいれば読書する人もいたりと、気楽に入れるコーヒーショップです。
 「近所にドミトリーがあり、そこへ泊った外国人がネットでコーヒーが飲める店を調べて来たりします。ブログ等に投稿されたので、口コミや画像などを見て初めての方でも結構来てくれます」などと飄々としたマスターでした。

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ジァン
東京都台東区下谷2丁目
9時から18時 金曜休

**「アングル」という雑誌の復刻版(『あのころangle 街と地図の大特集1979』主婦と生活社、2018年発行)に、当時の取材記事が掲載されています。記事には「コーラの原液を入れるびんを700円で購入し、底をギザギザに割って逆さに吊るしたのが照明。これが、すぐ横の6万円もしたドイツ製のランプよりはるかにステキに見えてしまうのは、マスター小林さんのセンスのよさにほかならない」とあります。改装もDIYでしょうか。窓ガラスに白マジックでメニューが書き込まれ、入り口の壁に大学時代のクラブ活動の思い出を英語で綴ってあったりと、文字が気になります。


 補足:喫茶店ではありませんが、限定といえば鶯谷の豆富料理屋「笹乃雪」は朝顔まつり期間中、朝7時より特別営業です。気になって過去に一度だけ入店したことがあります。
 朝の時間帯は単品メニューではなくコースメニューのみの提供(確か3500円位)でしたが、これを楽しみにしている人もいるのか、朝8時台でまずまずの混み具合でした。入れ込み式の座敷、下足番など普段経験しないので緊張しました。
 以前、読んだ本の中に「笹乃雪は江戸の昔、吉原からの朝帰りの客が豆富を食べに寄った処だった」などと書かれていました(出典を忘れたため追記します)。現在の店舗はサッと食べていけるような雰囲気でも価格設定でもありませんが、当時は気軽な街道沿いの茶屋だったのでしょうか。


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# by matsutakekissa | 2018-06-21 23:08 | 台東区山 | Trackback | Comments(0)

今治の思い出

 
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 『四十七都道府県の純喫茶』に掲載されていた喫茶「不二家」に行くため今治を訪れたのは4年前のことでした。「不二家」は予想どおりの内装が素敵な喫茶店でしたが、その他にも印象に残った喫茶店があったので書いておこうと思います。
 
 福山駅から長距離バス「しまなみライナー」で1時間半。ようやく着いた四国・今治でした。駅前は閑散としていても、駅前旅館に駅前食堂、少し歩くと歓楽街、広いアーケード。この町がかつては栄えたことを示していました。
 大通り沿いにチモトコーヒーの看板があったので近づいてみると、「自家焙煎珈琲アポニー」とありました。ビル2階への案内板をはじめ、階段途中のショーケースに飾られた年代物の小物や、オレンジ色のアクリル板扉は年月を重ねた老舗の雰囲気で、期待をふくらませて入店すると店内はきれいに改装されていました。
 マスターにブレンドを注文すると3つ脚のネルドリップで慎重にコーヒーを淹れ、最後にはスプーンで味見してサーブしてくれました。その一連の動作と白い上着を着ていることもあって、研究室の学者っぽくみえる姿でした。
 店は1965年創業、現マスターで2代目だそうです。店の外と中のギャップが面白い、と伝えると「最近はそう言われるお客さんもたまにいます」と言われました。外装を変えていないのは使えるところはそのままで行こうという考え方なのでしょうか。理由は訊きそびれてしまいました。
 以前はペーパードリップだったそうで、ドリッパーを見せながら「店ではネルですが、自宅ではペーパーですよ」と仰っていました。
 店を出る間際、豆を買う女性の若いお客さんが来店して世間話を始めた途端、今治弁になるマスターでした。老舗店や自家焙煎店という言葉から連想されるかたい雰囲気の店でなく、気楽に入れておいしいコーヒーが飲める明るい雰囲気の店でした。

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 もうひとつ印象に残っている店は、ジャズ喫茶の「ファイブイン」という店でした。ジャズ喫茶なのにマスターから「ジャズかけて大丈夫ですか」とか「音、うるさくありませんか」など、控えめな言葉に却って驚きました。「全然、大丈夫です」と言ったのですが、ずっとボリュームは小さめでした。カウンターの奥には日本全国のジャズ喫茶のマッチが飾られ、びっしりとレコードが棚に埋まった店でした。
 偏見かもしれませんが、東京あたりの自家焙煎店やジャズ喫茶だと、「本物志向」の店主が「わかっている人だけ来ればいい」というスタンスで営まれていることが珍しくありません。多数の競合店があり、他との差別化を図るためにも必要なことだと思いますが、ジャズや自家焙煎に特段興味のない自分はそういう店に入ると、とても緊張します。
 しかし、今治は自家焙煎コーヒー店もジャズ喫茶店も外観でそうした自己主張が強くなく、たまたま立ち寄った結果、そういうジャンルの喫茶店だったという具合でした。2店ともマスターは穏やかでお話もしやすかった。カウンター席に座ったせいもあったかもしれませんが。

アポニー
愛媛県今治市共栄町2丁目

ファイブイン
愛媛県今治市室屋町


 
 

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# by matsutakekissa | 2018-06-11 22:52 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)
 まだ訪れたことのない場所で喫茶店を探すとき、どうするか。
 今はインターネット上での情報が豊富でスマートフォンの地図アプリ等でも探しながら歩けるので、日本全国、どの地を訪れても喫茶店さがしには困らないとは思いますが、敢えて自分の場合はどうしているかを書き出してみます。

 今よりネットの情報が少なかった10年前はiタウンページで検索して屋号が気になる店の住所をリストアップして現地を訪れていました。喫茶店のカテゴリに入っていても、実際にはスナック、居酒屋、既に廃業して更地・・・。そんなことはしょっちゅうでしたが、その代わり、電話帳未掲載の喫茶店がすぐ近くにあったりと、プラマイゼロのことも多かったです。今思うと行き当たりばったりのいい加減なものでした。

 古い喫茶店が多く残っている街の特徴は、街自体が古い(歴史がある)ことが挙げられます。城下町、門前町、旧街道沿いなどの交通の要衝、一次産業で栄えた街など、いくつかのパターンがあるようです。官公庁街、繁華街、観光名所や温泉街にも喫茶店はありますが、個人的には土地の人向けの喫茶店が好きで前述のような街ばかりを訪れた結果、中心街を後回しにして後悔することもしばしばです。

 ストリートビューやGoogle Earthは超便利ですが、気に入った街並みや建物があると、つい本来の目的から外れた調べ物をすることも多々。自分だけでしょうか・・・。電話帳に未登録でも地図上に記載された喫茶店もあり、調べることが増えていきます。
 街の商店街、商工会のサイトも時には有用です。老舗がわかりますし、街の特徴や雰囲気が何となく掴めたりします。
 
 遠回りですが、本をベースにした探し方も面白いです。たとえば20-30年ほど前の旅行ガイドには手書きの地図に喫茶店の屋号が載っていたりします。ネット検索して現在も営業中らしいということがわかれば、急にその店に親近感を感じます。少しアクセスが悪くても行きたい、という気持ちになるし、お店の方に何かお伺いするときに、これを読んで来ました!などと話をするきっかけにもなります。

 柔軟性をもって候補地をいくつか探しておくのは大事だなと思います。ノルマだけの旅は辛いですが、保険を掛けておかないと現地で途方に暮れてしまい、旅費+経費÷滞在時間=時間あたりにかかる費用を計算すると、うわーっ!!となります(失敗談は多数あります)。

 地図があっても方向音痴なので、勘に頼り散策する能力に長けている方々はほんとにすごいな!と思います。ネットが便利になってほんとによかったな、というありきたりな台詞で締めさせていただきます。



 
 



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# by matsutakekissa | 2018-06-01 21:50 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)

それぞれのPRポイント

 先日バナジューとホットケーキの話を書いて思い出したことがありました。4年ほど前、大阪は難波の「アメリカン」という喫茶店に行った時のことでした。
 山之内遼氏の著書『47都道府県の純喫茶』にあった「アメリカン」の紹介で“デザートの餡やソースなど手作りし、客席に生花を飾る店”という部分に興味を持ち、早速現地を訪れると、人通りの多い繁華街にアメリカンはありました。午前中のお昼前の時間帯にもかかわらず、お客の出入りが常にある繁盛店でした。
 注文したコーヒーとホットケーキを食べていると、すぐ近くの席で取材のような会話のやり取りが聞こえてきたので、つい耳をそばだててしまいました。
 そのうちホットケーキの撮影が始まり、取材者側がホットケーキにシロップを掛けた瞬間を撮影したいと申し出たところ、経営者らしき女性がこのように応じていました。
 「うちのホットケーキは生地がシロップをすぐ吸い込むし、シロップ自体さらさらしてますから…」

 その時すでにホットケーキを食べていたので何となく趣旨が分かったのですが、恐らく取材者側は家庭用ホットケーキミックスの箱の写真にあるような、トロリとしたメープルシロップをホットケーキにかけた状態を想像していたのだと思います。
 取材者側が改めてホットケーキにまつわるこだわりやエピソードについて質問したところ、「うちはコーヒー屋なので珈琲豆のいいものを昔から使っています。コーヒーが看板メニューです」と返していました。

 その時は「流行りのホットケーキを取り上げてもらったらいいのに」と率直に思いました。ちょうどパンケーキブームの頃で、喫茶店のホットケーキも注目され、当時は盛んにTVや雑誌などで話題の店が取り上げられていたからです。

 ずっと後になってからあの日のことを改めて考えました。
 会話の端々から想像したにすぎませんが、経営者側の趣旨としては、
 コーヒー屋としての原点を忘れず、よい材料で手を抜かずにコーヒーを提供していること、ホットケーキなどの甘味にも力を入れているが、サイドメニューとして考えており、デザートショップではない、といったところだったのではないでしょうか。

 もし、自分が取材者だったとして、自分が想像していたことと異なる展開になったならば、どんな記事を書くだろうか。また、それが映像だったらどのように編集するだろうか。文字数にゆとりがあれば経営者側の思いを伝えながら人気メニューの紹介ができるのかもしれないが、「ホットケーキが人気の店ベスト20」のようなごく短い説明文を添えた特集記事や、平日夕方放送の報道番組内の街ネタ枠で三十秒の紹介であれば、丁寧に紹介することは難しいのだろうな、などと考えました。

 ほとんど思い込みというか想像の範疇で書いたことばかりですが、アメリカンのホットケーキはおいしかった。薄めに焼かれていて食べやすかった。それだけは確実です。


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上記の写真は、ミニチュアのホットケーキのフィギュア。『街角のレトロ喫茶店』(発売:リーメント)より。
メープルシロップの掛かったホットケーキといえば、こんなのを想像します。


 




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# by matsutakekissa | 2018-05-24 22:04 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)

喫茶店と訪れた街の印象を書いています。


by matsutakekissa