今治の思い出

 
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 『四十七都道府県の純喫茶』に掲載されていた喫茶「不二家」に行くため今治を訪れたのは4年前のことでした。「不二家」は予想どおりの内装が素敵な喫茶店でしたが、その他にも印象に残った喫茶店があったので書いておこうと思います。
 
 福山駅から長距離バス「しまなみライナー」で1時間半。ようやく着いた四国・今治でした。駅前は閑散としていても、駅前旅館に駅前食堂、少し歩くと歓楽街、広いアーケード。この町がかつては栄えたことを示していました。
 大通り沿いにチモトコーヒーの看板があったので近づいてみると、「自家焙煎珈琲アポニー」とありました。ビル2階への案内板をはじめ、階段途中のショーケースに飾られた年代物の小物や、オレンジ色のアクリル板扉は年月を重ねた老舗の雰囲気で、期待をふくらませて入店すると店内はきれいに改装されていました。
 マスターにブレンドを注文すると3つ脚のネルドリップで慎重にコーヒーを淹れ、最後にはスプーンで味見してサーブしてくれました。その一連の動作と白い上着を着ていることもあって、研究室の学者っぽくみえる姿でした。
 店は1965年創業、現マスターで2代目だそうです。店の外と中のギャップが面白い、と伝えると「最近はそう言われるお客さんもたまにいます」と言われました。外装を変えていないのは使えるところはそのままで行こうという考え方なのでしょうか。理由は訊きそびれてしまいました。
 以前はペーパードリップだったそうで、ドリッパーを見せながら「店ではネルですが、自宅ではペーパーですよ」と仰っていました。
 店を出る間際、豆を買う女性の若いお客さんが来店して世間話を始めた途端、今治弁になるマスターでした。老舗店や自家焙煎店という言葉から連想されるかたい雰囲気の店でなく、気楽に入れておいしいコーヒーが飲める明るい雰囲気の店でした。

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 もうひとつ印象に残っている店は、ジャズ喫茶の「ファイブイン」という店でした。ジャズ喫茶なのにマスターから「ジャズかけて大丈夫ですか」とか「音、うるさくありませんか」など、控えめな言葉に却って驚きました。「全然、大丈夫です」と言ったのですが、ずっとボリュームは小さめでした。カウンターの奥には日本全国のジャズ喫茶のマッチが飾られ、びっしりとレコードが棚に埋まった店でした。
 偏見かもしれませんが、東京あたりの自家焙煎店やジャズ喫茶だと、「本物志向」の店主が「わかっている人だけ来ればいい」というスタンスで営まれていることが珍しくありません。多数の競合店があり、他との差別化を図るためにも必要なことだと思いますが、ジャズや自家焙煎に特段興味のない自分はそういう店に入ると、とても緊張します。
 しかし、今治は自家焙煎コーヒー店もジャズ喫茶店も外観でそうした自己主張が強くなく、たまたま立ち寄った結果、そういうジャンルの喫茶店だったという具合でした。2店ともマスターは穏やかでお話もしやすかった。カウンター席に座ったせいもあったかもしれませんが。

アポニー
愛媛県今治市共栄町2丁目

ファイブイン
愛媛県今治市室屋町


 
 

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# by matsutakekissa | 2018-06-11 22:52 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)
 まだ訪れたことのない場所で喫茶店を探すとき、どうするか。
 今はインターネット上での情報が豊富でスマートフォンの地図アプリ等でも探しながら歩けるので、日本全国、どの地を訪れても喫茶店さがしには困らないとは思いますが、敢えて自分の場合はどうしているかを書き出してみます。

 今よりネットの情報が少なかった10年前はiタウンページで検索して屋号が気になる店の住所をリストアップして現地を訪れていました。喫茶店のカテゴリに入っていても、実際にはスナック、居酒屋、既に廃業して更地・・・。そんなことはしょっちゅうでしたが、その代わり、電話帳未掲載の喫茶店がすぐ近くにあったりと、プラマイゼロのことも多かったです。今思うと行き当たりばったりのいい加減なものでした。

 古い喫茶店が多く残っている街の特徴は、街自体が古い(歴史がある)ことが挙げられます。城下町、門前町、旧街道沿いなどの交通の要衝、一次産業で栄えた街など、いくつかのパターンがあるようです。官公庁街、繁華街、観光名所や温泉街にも喫茶店はありますが、個人的には土地の人向けの喫茶店が好きで前述のような街ばかりを訪れた結果、中心街を後回しにして後悔することもしばしばです。

 ストリートビューやGoogle Earthは超便利ですが、気に入った街並みや建物があると、つい本来の目的から外れた調べ物をすることも多々。自分だけでしょうか・・・。電話帳に未登録でも地図上に記載された喫茶店もあり、調べることが増えていきます。
 街の商店街、商工会のサイトも時には有用です。老舗がわかりますし、街の特徴や雰囲気が何となく掴めたりします。
 
 遠回りですが、本をベースにした探し方も面白いです。たとえば20-30年ほど前の旅行ガイドには手書きの地図に喫茶店の屋号が載っていたりします。ネット検索して現在も営業中らしいということがわかれば、急にその店に親近感を感じます。少しアクセスが悪くても行きたい、という気持ちになるし、お店の方に何かお伺いするときに、これを読んで来ました!などと話をするきっかけにもなります。

 柔軟性をもって候補地をいくつか探しておくのは大事だなと思います。ノルマだけの旅は辛いですが、保険を掛けておかないと現地で途方に暮れてしまい、旅費+経費÷滞在時間=時間あたりにかかる費用を計算すると、うわーっ!!となります(失敗談は多数あります)。

 地図があっても方向音痴なので、勘に頼り散策する能力に長けている方々はほんとにすごいな!と思います。ネットが便利になってほんとによかったな、というありきたりな台詞で締めさせていただきます。



 
 



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# by matsutakekissa | 2018-06-01 21:50 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)

それぞれのPRポイント

 先日バナジューとホットケーキの話を書いて思い出したことがありました。4年ほど前、大阪は難波の「アメリカン」という喫茶店に行った時のことでした。
 山之内遼氏の著書『47都道府県の純喫茶』にあった「アメリカン」の紹介で“デザートの餡やソースなど手作りし、客席に生花を飾る店”という部分に興味を持ち、早速現地を訪れると、人通りの多い繁華街にアメリカンはありました。午前中のお昼前の時間帯にもかかわらず、お客の出入りが常にある繁盛店でした。
 注文したコーヒーとホットケーキを食べていると、すぐ近くの席で取材のような会話のやり取りが聞こえてきたので、つい耳をそばだててしまいました。
 そのうちホットケーキの撮影が始まり、取材者側がホットケーキにシロップを掛けた瞬間を撮影したいと申し出たところ、経営者らしき女性がこのように応じていました。
 「うちのホットケーキは生地がシロップをすぐ吸い込むし、シロップ自体さらさらしてますから…」

 その時すでにホットケーキを食べていたので何となく趣旨が分かったのですが、恐らく取材者側は家庭用ホットケーキミックスの箱の写真にあるような、トロリとしたメープルシロップをホットケーキにかけた状態を想像していたのだと思います。
 取材者側が改めてホットケーキにまつわるこだわりやエピソードについて質問したところ、「うちはコーヒー屋なので珈琲豆のいいものを昔から使っています。コーヒーが看板メニューです」と返していました。

 その時は「流行りのホットケーキを取り上げてもらったらいいのに」と率直に思いました。ちょうどパンケーキブームの頃で、喫茶店のホットケーキも注目され、当時は盛んにTVや雑誌などで話題の店が取り上げられていたからです。

 ずっと後になってからあの日のことを改めて考えました。
 会話の端々から想像したにすぎませんが、経営者側の趣旨としては、
 コーヒー屋としての原点を忘れず、よい材料で手を抜かずにコーヒーを提供していること、ホットケーキなどの甘味にも力を入れているが、サイドメニューとして考えており、デザートショップではない、といったところだったのではないでしょうか。

 もし、自分が取材者だったとして、自分が想像していたことと異なる展開になったならば、どんな記事を書くだろうか。また、それが映像だったらどのように編集するだろうか。文字数にゆとりがあれば経営者側の思いを伝えながら人気メニューの紹介ができるのかもしれないが、「ホットケーキが人気の店ベスト20」のようなごく短い説明文を添えた特集記事や、平日夕方放送の報道番組内の街ネタ枠で三十秒の紹介であれば、丁寧に紹介することは難しいのだろうな、などと考えました。

 ほとんど思い込みというか想像の範疇で書いたことばかりですが、アメリカンのホットケーキはおいしかった。薄めに焼かれていて食べやすかった。それだけは確実です。


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上記の写真は、ミニチュアのホットケーキのフィギュア。『街角のレトロ喫茶店』(発売:リーメント)より。
メープルシロップの掛かったホットケーキといえば、こんなのを想像します。


 




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# by matsutakekissa | 2018-05-24 22:04 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)

自己紹介、免責事項など

簡単な自己紹介、ブログの主旨、免責事項をまとめました。【2011.2.5】
【2011.3.8修正】
【2018.5.18修正】

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このブログについて
喫茶店を訪れた時の感想・記録を忘れないように文字に残すことが目的です。

プロフィール
女、30代。石川県育ち。現在都内在住。

免責事項
非営利、個人的趣味のブログです。
記事掲載にあたっては、
個人情報侵害のおそれがある内容、提供される味への言及をできるだけ避け、
店内(ハード)の様子と、お店の方や常連客の世間話(ソフト)を表すことによって、
その時々の楽しかった思い出を個人的に反芻することを目的としています。
当方のミス(重大な誤りなど)は、よろしければご指摘いただけますと大変有難いです。
お店に関する情報のうち、住所は原則として町名まで掲載しています。
営業時間、定休日は訪問時のもので信憑性が低いですが参考程度に記します。

喫茶店の経営者様および関係者様
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お手数ではございますが当該記事のコメント欄(管理者のみ閲覧できる非公開設定がございます)
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当方に問題があると判断した場合、記事はすみやかに削除いたします。

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# by matsutakekissa | 2018-05-18 00:31 | 自己紹介、免責事項、連絡先など | Trackback | Comments(0)

バイパス沿いの温室喫茶

 香川と聞いて発想するのが饂飩とこんぴら参り。この唄が脳内再生されてしまいます。
 「金比羅船々 追手に帆かけて しゅらしゅしゅしゅ」
 近年になり本やWEBの検索等で建築でも有名な県ということを知りました。丹下健三設計による県庁舎と体育館をはじめ、高名な建築家による建造物が複数存在しています。イサム・ノグチの美術館に行きたかったのですが事前予約が必要だったこともあり、県庁舎をみるために2年前、高松を訪れました。
 県庁舎は鉄筋コンクリートなのに和風に見え、遠目にも圧倒的存在感のある建物でした。この庁舎を日常風景として過ごしてきた高松の人たちは、他の自治体の庁舎を見たら何と思うのだろうかな。
 街を歩いているとうどん屋はいくつか目に入ってきましたが、その他多いと感じたのは書店の数でした。自分が住む町の近隣の中規模書店がこの数年でバタバタ閉店したことを考えると羨ましいかぎりです。
 
 建築以外の目的のひとつは郊外型の喫茶店を訪ねることでした。1970年代発行の雑誌から現存する店を調べたところ、香川県は郊外型の店が多いようで、そのうちの一軒である国道11号線沿い、1976年創業の店を訪ねました。国道11号線は徳島、高松、丸亀、松山へと至る交通の大動脈のひとつ。バイパス沿いにありがちな24時間営業の派手な看板を掲げるチェーン店が、店の周辺になかったのは意外でした。

 内装設計は四国では有名な寒川商業建築設計所によるものだそうです。内装担当者の話によるとドライバーに目につくデザインを取り入れようと、意外性のある透明なトンネル型の建物を設計したそうです。見る人によっては電照菊のビニールハウスのようにも見えるとのこと(『商店建築』1977年より)。掲載写真を見ると格好良い外観ですが、外から丸見えだし冷暖房費は高くつかないのだろうかと余計な心配をしてしまいました。

 辿りついてみれば店内は大きく改装され、開業当時にはなかった2階席が増築されていました。1階の道路に面した窓には目隠し用のシールが大きく貼られ、日よけ用のロールスクリーンが設置され、道路と建物の間の庭には樹木も植えられています。そのためドライバーへのアピールは開業時より弱いのかもしれませんが、40年の歳月を経ても建物自体は斬新に映りました。
 店内1階の内装は開業時と比べてやや趣が異なり、衝立と観葉植物が所々に配置されて落ち着いた雰囲気に見えます。増設した2階は1階とは設計者が異なるのかウッディ―な印象で、隠れ家のような屋根裏部屋の感じ。外観はクールな印象、内装は暖かみのある雰囲気のギャップが素敵な店でした。

軽食喫茶 光琳
香川県東かがわ市大内町西村
7時半~18時 火曜休(2016年訪問時)
参考文献:『商店建築』1976-77年

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# by matsutakekissa | 2018-05-17 18:21 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)

喫茶店と訪れた街の印象を書いています。


by matsutakekissa