マウンテン

 活気ある大きな商店街内には、意外に喫茶店が少ないような気がします。生鮮食品に生活必需品などの店の数は充実していても、その数に比例しているというわけではなさそうです。昔はもっとあったけど、淘汰されてしまったのか、それとも、お買い得な買物の後は、どこにも立ち寄らずにまっすぐ帰ってしまうのか。
 そんなわけで、商店街は栄えていようがいまいが、いい喫茶店があるかどうかにはあんまり関係がない。ただそれが言いたかっただけなのです。

 この日は東大島駅から大通り沿いに南下し、ひたすら歩きました。目的地は東砂にある末広商店街です。都営住宅群を抜けてしばらく歩くと、ようやく商店街の入り口にたどり着きました。
 お昼すぎという中途半端な時間帯のせいか静かで、中ほどにはマーケットもありました。ここは昔からある商店街のようです。このような住宅街の真ん中にある商店街は、駅前から発展した商店街と比べチェーン店は少なく、ローカルな雰囲気が漂います。
 歩いて行くと、店先に人形焼をならべたテーブルを置いた接骨院がありました。副業として売っているのかと思ったら、人形焼はメーカー商品を販売しているのではなく、自家製でした。店の裏手には人形焼の店舗がありましたが、人の気配がありません。どうやら焼き上げた後は表で販売しているようです。
人形焼は餡入りと餡なしがあり、なしの方を一袋買いました。11個で200円と、観光地で買うのよりずいぶん安い。屋号は江東屋とあります。後日ネット検索してみると、近所では知られた存在らしく、いくつも紹介サイトが登場しました。
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 そろそろ引き返そうかと思った時、喫茶店の看板がありました。マウンテン=山。良い名前だ。反射的にドアを開けると、店内はほぼ満席状態で、1席だけ空いていたカウンター目の前の席に座りました。
 ランチを取りにきたお客さんが多いらしく、店内にはいいにおいが漂っています。まだお昼を食べていなかったことを思い出し、自分もピラフとコーヒーのセットを注文しました。

食後のティータイムの話に花が咲き、賑わう人々。良い雰囲気が流れていました。おもしろくもくだらない会話の応酬が続き、それを聞きながらぼんやりと食事をしていました。完全によそ者で、周りは知らない人ばかりなのに、不思議と居心地はわるくない感じです。コーシーという発音も、久しぶりに耳にしました。
 それに、店主のびっくりするような発言もあったのです。世間話から地元の話題になった時、「砂町あたりはあまりいい町じゃないね。けっこう保守的だから、私みたいなよそ者はなかなかなじめない」という主旨の内容でした。
 お客さんはもちろんのこと、お店の方もてっきり地元出身だと思っていました。結局、東京だろうとどこだろうと、ムラ意識というのは必ず存在し、近づこうとすると見えない壁が立ちはだかること、自分も経験してきたからです。共感を覚え、心の中で相づちを打ちました。
 しかし、それと同時に、ちょっと不安になりました。でも常連さんの中では反論する方はおらず、場が冷めることもなく、誰かが「私はずっとここに住んでいるからね、わからないよ」と言っただけでした。
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 一定の時間が経ったのか、気が付くと一人、二人と帰っていき、とうとう、店主の方と自分とふたりきりになりました。いい機会のはずだと思って、店の方に話しかけたものの、この日の自分はあと一歩の勢いがなく、かえってうさんくささを与えてしまいます。
 「でも、どうして喫茶店なの? どんな店でもかまわないの?」と本質を問いかけられ、しどろもどろに答えながら思いました。本当に必要性があると信じて、これを続けているのかな、と。
 なんとか主旨を分かっていただいた後に聞いた言葉は、新しい内容ではなかったのですが、心に重く残りました。
 「さっきも言ったけど、この町はとても保守的なところがあります。でも、みなさん、それぞれ悩みを抱えていて、それを共有してて。ここへ来たお客さんは、たとえ初めてでも落ち着くっていうんですよ。25年やっててよかったのは、そういうところかな」
 聞くまでもなく、雰囲気からそういうものを感じ取ってはいたのだけど、それを言葉で聞けてよかったなあ。

江東区東砂4丁目
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# by matsutakekissa | 2011-11-18 22:05 | 江東区山 | Trackback | Comments(0)  

町をあるく口実

 知らない町を歩くのは好きですが、ただやみくもに、しらみつぶしに回るのはノルマのようで疲れます。町を歩く動機づくりとして、以前、試したことのひとつをここに書いてみます。

 きっかけは重盛栄信堂西小山支店で購入したカステラ焼でした。それをお土産として渡した先で、「えらく昔っぽい型だね」と言われてしまいました。
 改めてよく見ると、ピストル、戦車、日章旗、鉄帽らしき形をしたカステラばかり。戦前の型?おまけに外装には未だに目蒲線と印刷されています。他の支店もみんなこんな形なのでしょうか? それを確かめようと支店めぐりをすることになったのです。
 重盛人形焼の黄色い包装紙に印刷された支店の住所を見ると、その多くは、ちょっと微妙な場所にあります。西早稲田に金町、成増、中延、南千住に三河島・・・・・・。渋谷、新宿などのターミナル駅ではなく、都内各地の商店街に店を構えているようです。
 その結果、あの不思議な型を使う支店は、自分の知るかぎり西小山と人形町の本店にしか見当たらず(全部の支店をまわっていないのであしからず)、またカステラ焼そのものも取り扱わない支店があったりと空振りに終わることも少なくありませんでしたが、これを口実に知らない町を歩くのは目新しさがあり、当初のおめあてがなくても充分楽しめたのです。

 たとえば、練馬区にある富士見台支店を訪れたときのこと。こちらの店舗にはカステラ焼ではなく登り鮎がありました。富士見台駅から、商店街を抜けていくとやがて住宅街に入ります。大きな公園を抜けたあたりまではよかったのですが、地図を見ずに歩いていたため、だんだん心細くなってきました。
 住宅街から再びぽつぽつと商店が混ざり始めたあたりに、古めかしい外観の喫茶店がありました。窓と入り口ドアにはカーテンがかかり、オレンジ色の灯りがちらりと見えました。道には迷っていましたが、あまりためらわずに中に入ってみました。
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 店内にいたのは店のおじさんとおばさんのみでした。テレビの音だけが静かに流れていました。
 赤と紺のビニールレザーの椅子が交互に並び、それと反対色の座布団が置かれ、背もたれにはレース調のカバーがかけられています。こういうディテールが乙女心をくすぐるとでもいうのだろうか。身の回りにひそむ可愛いモノに鈍い自分ですが、これには思わずみとれてしまいました。
 椅子もテーブルも床のリノリウムも古びてはいたのですが、手入れがきっちりしていたのが印象的でした。カウンター席が荷物置き場、なんてことも、昔からの喫茶店ではよく目にしますが、それもありません。
 ランチ終了時間きっかりになると、表に出してあったメニューの看板が下げられていました。しまった、食事も頼めばよかったなあ。
 店を出てしばらく歩くと、隣駅の商店街のはずれに出ました。歩かなければこのような駅と駅の間にある喫茶店に出会うこともなかったなあ、と賑やかな通りに出てから思いました。

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 話は再びカステラ焼に戻ります。最近になって、東京の手土産紹介本『東京手みやげ逸品お菓子』(料理通信 編集、河出書房新社、2009)を読んだところ、人形町の板倉屋に戦時焼という名物があるのを知りました。
 添えられた写真には、重盛の人形町や西小山の店で見たカステラ焼と同じ形の商品が写っています。
本によれば板倉屋の創業は明治37年で、戦時焼はその頃からの名物だそう。ちなみに人形町の重盛栄信堂の本店創業は大正6年です。いえ、別に元祖探しをしているわけではありませんが。
 さっそく、板倉屋を訪れてみると、店先には名物・人形焼と書かれた暖簾がかかり、奥では職人さんが働いているのが見られました。その他瓦煎餅系の甘い煎餅も置いてあり、商品展開は重盛とほぼ重なることに気が付きました。
 間口の狭い店ですが、有名店なのかたくさんの色紙が並べられていました。カステラの輪郭はこれまでに買った店より形がよく浮き出てはっきりしています。大量生産をせず、丁寧な仕事をしてややいい値段を付けることが、他店との違いのように思われました。
 それにしても、こんな型のカステラに出会うとは思いもよりませんでした。ざっくり言うと語弊があるけど、東京って面白い町だなあ。かつて反戦運動がさかんだったころなど、このお菓子に対する逆風もあったのかもしれませんが、そこでやめないでいたからこそ、今では貴重なものとなっているのでしょう。b0158023_12212613.jpg


ローリング 練馬区貫井
ホットコーヒー 350円 ランチ各種 700円~
※ローリングは既に閉店との情報をいただきました。【2013.2】カステラ焼(袋詰め)の値段(2011年冬~春頃、うろ覚え)
※個数は店舗によって異なります。
重盛栄信堂 西小山支店
260円・500円
重盛栄信堂 総本店
600円~
板倉屋
400円~
 
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# by matsutakekissa | 2011-11-10 21:40 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

ロダン

 b0158023_1243286.jpg国際通りの裏手、住宅街にある喫茶店。いつ営業しているのかさっぱりわからないため、平日の朝に訪れると、まだ早い時間というのに客席はほぼ満席でした。
 場所が場所なので、自分以外は近所の常連さんばかりでしたが、マスターから「いらっしゃいませ」と元気に声を掛けられて、店の空気にスッと馴染むことができました。
 お客さんはほとんどが一人で来ている方ばかりのようで、タバコを吸ったり、新聞読みながらコーヒーを飲んだり、モーニングを食べたりと、思い思いのひとときを楽しんでいます。時折、マスターに話しかけるお客さんがいるも、店内は静かなものでした。
 店の客席側には大きな窓がありますが、全体に褐色のレースカーテンが掛かっています。そこから差し込む朝の光が美しく、雰囲気がありました。
 その後2回ほど朝の時間に訪れましたが、やっぱり混んでいて、座るのはいつも同じ席でした。
 時間帯を変えるため、ある日の週末に訪れると、お客は誰もいませんでした。朝は常連客で必ず埋まっている席に初めて座りました。いつもとは違う場所から店内を見渡すと、あることに気付きました。
 天井には分厚いガラスがはめられた変わった形のシャンデリア。壁紙は凸凹でエンボス加工がされていました。カウンターには「考える人」の像も。そうか、これが店名の由来なんだなあ。
 その日は暑かったので、何もせずぼんやりとして涼んでいると、やがて、窓ガラスに人影が差し込み、新たなお客さんがやってきました。マスターとおしゃべりを始めたのですが、途中からお客さんの方がマスターの聞き役になっています。朝の様子から寡黙なマスターだと思いこんでいたので、ちょっと意外でした。

 ロダンの看板を見ていて気になることがありました。照明看板はロバート・ブラウンのロゴ。店のメニューに現在、アルコールはなかったはずです。開店当初、ロダンはお酒を出すスナック喫茶として出発していたのでしょうか。ちなみに、ロダンのすぐそばにキャラバンコーヒーのロゴが入った看板を掲げた喫茶店がありますが、現在そちらはカラオケ喫茶となっています。それぞれの店舗は開店当初から時間を経て、店のジャンルが変わってしまったようです。

モーニング(トースト、ミニサラダ) 400円
台東区竜泉3丁目
朝7時頃~
土曜日は営業、日祝休みのようです。

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# by matsutakekissa | 2011-10-14 22:24 | 台東区山 | Trackback | Comments(0)  

パン キムラヤ 茅場町

 都内各所に「キムラヤ」という名前のベーカリーは存在します。あんぱんで有名な銀座の木村屋総本店から派生しているのかは分かりませんが、何か関係はありそうです。その他、和菓子屋の「伊勢屋」とか、中華・洋食の「三好弥」なんかもいろんな所で見かけるので、気になる名前です。
 
 茅場町のキムラヤでは、早朝からパンと弁当を販売しているため、近場のオフィスで働くお客が次々と入ってきては、ドッグパンやサンドイッチを買っていきます。
 奥には4、5席ほどのカウンターがあり、イートインスペースになっています。買って帰るだけなら、何の躊躇もないのですが、あの席に座るのは難しそうでした。どうやら、そこに立ち寄るサラリーマンは、ほぼ皆顔なじみの人ばかりのようで、席が空いているタイミングでないと、「飲んでいきたいのですが」の一言が言いづらい。
 でも、ある日の朝、思い切って、声をかけてみました。レジ担当のおばさんは「コーヒーでよろしいでしょうか?」と聞きました。コーヒー以外の飲み物はほとんど出ない(あるいは出してない)のかもしれません。
 奥の厨房に向かっておばさんが声を掛けると、鼻歌まじりのおじさんが登場し、コーヒーを淹れてくれました。
 カウンターの席に座りました。こちらにもドリンクのメニューは特になく、キーコーヒーの保存缶とブルックボンドの紅茶保存缶が、棚に載っていました。
 「スポーツ紙しかないですが、どうぞ」とおばさんが新聞を置いてくれると、「こっちのほうがいいんじゃないか」と、おじさんのほうが女性週刊誌を出してくれたり、などと、色々と世話を焼いてくれます。おじさんは人好きのするタイプで、常連客と会話をかわしたり、自分にも話しかけてきてくれて、緊張の糸がようやくほぐれました。
 一通りの作業が終わると、おじさんは調理の続きがあるのか、奥へ引っ込んでいくのですが、新たなお客が来ると、また、鼻歌をうたいながら登場。それにひきかえ、おばさんはレジ担当なので、客がいてもいなくても、ずっと入口近くのカウンターに立っています。そして、計算も速い。商品の値段をすべて憶えているようで、暗算で合計金額を出して、お客をさばいていくのです。こういう連携プレーを見ているのは、なんだか楽しい。こちらは喫茶店ではないのですが、それに似た雰囲気がありました。慌しく食べて飲んで帰りましたが、充実したひとときでした。

コーヒー 250円
サンドイッチ、惣菜入りのドッグパンは160円くらいからでした。
中央区日本橋茅場町3丁目
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# by matsutakekissa | 2011-10-13 21:44 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

あたらしい出会いをもとめたけれども

以下、ねむたい内容で、だらだらと書いています。オチらしいオチもありませんが、ご容赦を。

 週末の半日を使い、スカイツリー周辺をゆっくりと散歩することにしました。浅草から押上、八広まで歩き通すつもりで、アサヒビール本社の前から出発。
 この日は天気がよかったのですが、ツリー見物の人出がやや減ったように感じました。もちろん建設前と比べればずっと多いのですが。道路も混雑が緩和されていて車の流れはスムーズでした。
 清澄通り沿いにある喫茶『珈生園』に入りました。観光客や地元の人がきっといると予想していましたが、他のお客はだれもいませんでした。
 ホットコーヒーに生クリームを落としてもらい、さらに自分でコーヒーミルクと砂糖を入れてダブルミルクコーヒーを楽しみました。涼しくなると、こってりしたコーヒーがおいしく感じられます。
 会計時、マスターから「ツリー見物ですか?」と訊かれ、少し立ち話をしました。
 「なんか人出が減ったような気がするけど、どうですか?」と尋ねると、震災以降は全然ダメ、とのことでした。すでに大方の建造が終了し、これ以上塔が高くならないから客足が減少したかと想像していたのですが、影響は今も続いているのでした。
 その後話題はスカイツリーに移りました。
 「けっこうしますよね、入場料3000円でしたっけ?」「いいえ、予約で500円かかるんですよ。だから3500円です」
 びっくりしました。予約券って、ふつう入場料より割引されるものではなかったっけ?それとも、開業記念のお土産でもつけてくれるだろうか?
 「地元の人はタダで招待、ってのはないんですか」と訊くと、「ないない」と苦笑いしておっしゃいました。地元の商店街の物価と入場料とを比較しても、ちょっと落差が大きい気がする。六本木ヒルズと麻布十番商店街のような相乗効果があればいいけれど、どうなんだろう。

 四ツ目通りの交差点を通り過ぎ、そのまま大通りを進んで十間橋のたもとまで来ました。ここは有名なツリー撮影スポットでした。橋の上の通路は面白いことになっていて、一方は観光客ばかりで、もう一方は地元の方ばかりです。なぜなら、スカイツリーに近い方で撮影をするためで、通路がふさがれていて、反対側は地元のおじいさん、おばあさんたちが通り過ぎていくのでした。
 十間橋通り商店街は、通りの裏手にあるキラキラ橘商店街とは異なり、いたって静かなものでした。閉めている店舗が多いこともあり、普段ならやかましく感じられるパチンコ店の音すら、あってよかったと感じられるようなBGMに聞こえます。賑やかな方へ行っておけばよかったかと思いましたが、すでに閉店した商店の看板のみがそのまま残るさびれた風景を眺め歩くのも、なかなか悪くはないと思いました。よく見れば最近開店したと思われる新しいカフェやそば屋さんもありますが、古い建物をそのまま使っているため、知らなければそのまま通り過ぎてしまうような感じです。

 明治通りと合流する通りに入りました。ここへきてようやく、大回りをしていることに気づき、ひたすら早歩きになりました。京成曳舟駅の踏切を越えてすぐの交差点を右折し、北東へ進むと周辺の風景は郊外らしくなり、店舗も国道沿いにあるような大型店が進出しています。ただ、途中で見かけたガソリンスタンド名は「寺島町」という旧町名が使われていることに気が付きました。道路沿いには、それほど距離をおかずに公園が3つもあるので、不思議に思いながら通り過ぎました。
 八広駅に近い交差点で左折し、水戸街道近くのコーヒー&ラーメンの店『フクトミ』の看板が見えてきました。やれやれ、ようやく目的地です。
 前回、夏の暑い日に訪れた時はアイスコーヒーしか飲む気になれなかったので、涼しくなったらラーメンを食べに行こうと思っていました。イス10席の小さな店内ですが、メニューはヤキメシ、ラーメン等の軽食にコーヒー、ソーダにこぶ茶などのドリンクメニューが揃っています。
 ここまで一気に歩いてきたので、やや疲れていたのですが、お店の方には寒そうな顔に見えていたようで、「食べればあったまるわよ」という声とともに、どんぶりがさし出されました。
 帰り際、コーヒーとラーメン、どちらをメインで営業しているのかを聞こうと思いました。「看板にコーヒー、ラーメンとあるのですが」と尋ねると、質問の仕方が悪かったのか、「コーヒーとラーメンの間に点があるでしょ」という答えが返ってきました。ええと、そうではなくて、コーヒーとラーメン、どっちがメインでやっているんでしょうか?と改めて尋ねると、うちはもともとラーメン屋です、とのきっぱりとした返事が返ってきました。出前注文が多かったので喫茶メニューを加えたとのことでした。
 そう言われて店内を見渡すと、厨房には中華なべやフライパンが複数掛かっているし、お冷はいただいたけど、灰皿は出てこないことに気が付きました。
 店を出た後、東向島の商店街にも中華料理なのにコーヒーも出す店があることを思い出しました。喫茶店で軽食メニューとしてラーメンを加えた、という答えを期待していましたが、あてが外れてしまいました。勝手に想像した自分が悪いのだけれど。ドリンク注文だけでもOKだったので、自分の解釈にとどめておけばよかったかもしれないと、聞いてしまったことをすこし後悔しました。
 いろは通りを通って東向島駅に向かっていくと、玉の井という名が入っている店舗を目にしました。自分にとって「たまのい」という響きで連想するのは「タマノイ酢」であって、お雪さんの出てくるあの小説ではありません。「あぁ、ここがかの舞台の地か」という感慨深い気持ちになれないのが残念なところです。
 商店街のなかほどには確かシベリアを売っている古びた店があるはずでしたが、見当たりません。何度かいったりきたりして、建物のあった場所が更地になっていることに気付きました。
 思ったより新しい発見がなく、このまま帰ってしまうのも、もの足りません。でも、時間もあまり残されていないし、疲れてしまった。電車に乗り込み、浅草へ戻ります。
 喫茶店に寄る時間もないので、大通りを渡ってすぐの裏通りにある珈琲豆販売店「富士珈琲商会」に行くことにしました。珈琲豆にはあまり詳しくなく、普段うちで飲むのはインスタントなので、豆のよしあしや好みなどさっぱりですが、こちらの店は焙煎が浅めの種類があって、あっさりしているように思えます。巷では深煎りでコクのある濃い味が流行りなのかもしれませんが、自分の好きな喫茶店で出されるコーヒーの味に似ているような気がして、好きになりました。
 場所柄、近所の飲食店からの注文が多いようで、豆を挽いてもらう間にも近所の喫茶店の人が品物を取りに来ていました。店のご主人は物腰がとてもソフトで、豆を挽き、袋づめする一連の動作の間、一言、二言おしゃべりしていると、自分もゆったりとした気分になります。
 味とか雰囲気ではなく、店の方の人柄を好きになる=満たされた気持ちになる。これが自分の行き着くいつものワンパターンだと、最後に気が付きました。
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# by matsutakekissa | 2011-10-06 12:50 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)