再開のご報告

 ご無沙汰しております。
 一年間、ブログを更新していませんでした。
 出産を機に喫茶店めぐりの道楽は止めて、ブログは停止する予定でしたが、道楽自体はまだ止められそうにはありません。自分の時間は減りましたが、喫茶店で過ごす寛ぎのひとときは、かえって貴重に感じられるようになりました。
 超、超不定期になりますが、書きたくてしようがない気持ちになったら、パソコンを立ち上げて記事をアップしようと思っています。


 以下はちょうど一年前、ブログを停止するつもりで書いた文章です。結局、続けることを決めましたが、止める気持ちも同じくらいありますし、悩んでいることもありますので、あえて掲載します。

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 ブログを停止することにしました。
 この何年間か考えてきたことですが、喫茶店をブログで取り上げることのメリットとデメリットを天秤にかけると、デメリットばかりを感じるようになりました。

 ブログを始めたばかりの頃はかなり気楽に始めたつもりでしたが、店舗側、常連客の迷惑にならないように、と突き詰めていくと、それは個人のお気楽な感想日記ではなく、名刺とカメラ持参の取材という方面に、限りなく近くなったというか、そうせざるを得ないように感じるようになりました。

 もし、「自分がやらなくて他に誰がやれる?」という強烈な自負心やモチベーションを持続できていたり、他に類のないテーマであれば、個人の道楽を飛び越えてブログを続けていたでしょう。しかし、個人の楽しみという枠を飛び越える覚悟もなく、このままブログを続けることができません。

 そのような気持ちになるのは、ブログ掲載を快諾して頂いた後に自分が再度店を訪れると、店舗経営者の方からは、もはや単純に「ただの」客としてではなく、「チェックしに」来た人として意識して、かえって気を遣わせているのでは、と思うこともあります。ドシロウトの小娘が、年上の経営者を困らせてんじゃないよ、と周りのお客は感じているのではなかろうかと、ひやひやします。

 そうなってくると、もはや自分はそういう「プロ」じゃないので、という逃げ口上が通用せず、書いた言葉の一つひとつに責任を追わねばならないと考えるようになりました。「プロ」でもなく、「アマ」としては行き過ぎの、中途半端な位置にいる自分を感じます。

 もうひとつ困ったことは、自分が喫茶店のすべてを好きになりすぎてしまったことです。文章も写真も自分のいろを付けてしまうことを、すごく陳腐に感じます。個人的には、その喫茶店を初めて訪れる人にとって、あまり余計な先入観がないほうが楽しめると思います。ガイドブックを見て想像した所と現実が大きく隔たりがあって落胆したり、事前に知りすぎてしまうことがつまらないのと同様です。

 インターネットの情報は多くが一過性のものであり、時に使い捨てであることも、気になります。自分の大好きな喫茶店は、流行り廃りも関係なく、時の流れとともにゆるやかに変化しながらあり続けてほしいと願っていますが、ネットの情報として載せること自体が、「大好き」とか「大切にしたい」という言葉の真逆をゆくのかもしれないと考えるようになりました。
 ブログというツールやインターネットを否定するつもりではありませんが、自分がそれをうまく使いこなせていないという気持ちがあります。

 うまくまとまらない内容ですが、結局、個人の道楽の枠を越える覚悟がない以上、ブログを続けることができないと思ったため、休止することを決めました。
 今後は個人の道楽で、町を歩き、喫茶店に入るという趣味を気楽に続けていこうと思っています。

 最後に、喫茶店の店主の方々と常連客の方々に感謝します。また、貴重な時間を当ブログ閲覧に割いて下さった方々、ありがとうございます。そして、さよなら。

 
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# by matsutakekissa | 2013-01-02 08:43 | お知らせ | Trackback | Comments(0)  

陶器のペア猫

 
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陶器店の店先でペア猫置物が売られていました。喫茶店でよくみかける陶器の猫ではないか。値段を見たら千円ちょっと。また家に余計なものが増えるかな、と一瞬迷いましたが、買うことにしました。
 店の方に話を聞くと、瀬戸物のロングセラー製品で、20年以上前から販売している。3年前はあまり出なかったが、この1年はまた人気が出てきたとのことでした。
 日本ビクターのトレードマークである、ニッパーの置物のようなものかなあ。

 家に帰りネットで調べてみると、自分が購入したのと同じ製品が普通に販売されていることがわかりました。ただし、昔に製造されたものは骨董品としてのあつかいで、値段も上がっています。
 てっきり入手困難なものと思い込んでいたので、とても意外でした。
 猫たちは大きさ、彩色、表情が少しずつ異なっても、2匹が仲睦まじく寄り添っている姿だけは同じでした。この愛らしさとフォルムの美しさが、長く支持を受ける理由のひとつなんでしょうか。
 


 
 
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# by matsutakekissa | 2011-12-31 15:07 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

フローラ

 お盆の夕暮れ前、スカイツリーの足元付近を歩いていたら、空がだんだん曇ってきて、ぽつぽつと雨が降り出しました。風も強くなってきています。暴風域に入ったようです。
 手元にあるのは、柄の折れた心もとない折りたたみ傘いっぽん。かばんには大事な書類が入っているので、濡らしでもしたら大変だ。どこかしのげる場所はないかと、住宅街を歩きまわっていると、コーヒーカップのシルエットが描かれた看板が目に入りました。
 赤レンガ貼りの外壁はいかにも喫茶店らしいのですが、上の住居部分は黄色味がかったモルタル壁で、すこし不思議な印象を受けました。
 上品な内装の店内ですが、下町の気の置けない雰囲気があって落ち着きます。
 店にいたグループ客らが先客としていたのにもかかわらず、店のママさんはとても気遣ってくれました。
 雨宿り目的で店に入ったことを告げると、「見つけてくださって、ありがとう」と言われたのを、今もよく覚えています。

 その後、近くへ立ち寄ることがあると、何度か店を訪れました。客足の絶えない店で、おしゃべり目当てで訪れる常連さんも多いようでした。最近になって、店のママさんとお話をすることができました。
 店内のあちこちをあらためてよく見ると、随所が凝っていました。b0158023_1240362.jpg
 木目が美しい壁板は創業以来変えたことがないそうで、床は木レンガを使用していました。お母さんが描いたという数々の絵画は本格的な作風で、仏画と南国土産のお面がうまく調和しています。
 店内は近年テレビドラマの撮影に使われたそうです。監督さんは長年使って変色した椅子の背もたれがいい感じと言っていたそうで、ママさんいわく、「日焼けしただけなのにね」と気恥ずかしそうでした。それにしても、テレビ局の人たちは、普段からロケ地探しに奔走しているのだろうか。さまざまな条件が揃わないと撮影は成立しないそうだし、大変な仕事なんですね。

 また、毒蝮三太夫さんのラジオ*に出演したこともあるそうで、その時のエピソードをお聞きしました。
 番組は毎回首都圏の小売店舗から中継し、店の方や近隣住民の方たちとまむしさんとの交流をメインに進行するそうです。ママさんは毒舌のまむしさんを食っちゃうような勢いで話がはずんだらしく、まるで漫才のような内容だったとか。まむしさんから「『下町の太陽』と言われたの」と発言した後、「自慢話でごめんなさいね」と、急に謝られてしまいました。いえいえ! こういう話は大好きです。それまでのおしゃべりから、収録の雰囲気がなんとなく想像できて、楽しくなってしまいました。
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 客層はほぼご近所の常連さんが多いそうで、なかには90歳代の方もいるのだとか。スカイツリーの見物客も時々やってくるそうですが、立地がやや分かりづらいので、2度目に訪れるのに苦労した、というお客さんの話も聞けました。でも、迷う楽しみも味のうちなんだろうなあ。

コーヒー 400円
墨田区東駒形2丁目
第一土曜はお休みだそう。
※立地がわかりづらいと書いてしまいましたが、実際はそうでもありません。本所中学校から通りを挟んだ裏手にあります。なお、写真は設定ミスで実物と大きく色合いが異なるため、今回はグレースケールでごまかしています。すみません。

*「大沢悠里のゆうゆうワイド」内「毒蝮三太夫のミュージック・プレゼント」(TBSラジオ)。毒舌と言われる毒蝮さんですが、「ウルトラマン」と「ウルトラマンセブン」の温厚な隊員役しか知らないので、今度ラジオを聴いてみたい。
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# by matsutakekissa | 2011-12-26 07:53 | 墨田区山 | Trackback | Comments(0)  

旅先の駅前喫茶店

 一応、東京の喫茶店を優先的に書いているため、旅先などの喫茶店はおざなりになりがちです。来店後時間が経ったものもあり、外観が印象的だった3軒を忘れないうちに書き残しておきたいと思います(カッコ書き部分は来店した年と月)。

日東紅茶ティーパーラー 島根県浜田市 (2010年10月)

b0158023_21201910.jpg 昨秋、永年の夢だった鳥取・島根旅行に出かけました。米子、境港、松江を2泊3日でゆったりまわる旅のはずでしたが、結局はやや急ぎ足の旅になり、2日目は翌日の移動のため浜田に宿を取ることとなりました。
 日暮れ時、松江駅から電車に乗り込み、浜田駅に着いたのは夜も更けてからでした。移動のために泊まるだけだったため事前に下調べもしなかったのですが、駅前には古いアーケード商店街がありました。少し寂れた街並みでしたが、端から端を歩くだけでも旅情を感じました。
 翌朝、駅前に古めかしいビルがあることに初めて気がつきました。パーラーの看板が出ています。しかも営業中でした。昨晩はあれだけ歩いたのに、なぜ気付かなかったんだろう。連れ合いを説得して、30分だけということで急いで店に向かいました。
 モーニングセットの札が下がるドアを開けると、古びた内装の店内に改めて驚かされました。テーブルやイスはもちろんのこと、すべてが色あせて使い込まれた感じ。アンティークの古い電話機や陶器製のネコたちも隅っこに座っています。
 モーニングを待つ間に雑誌の棚をのぞくと、地元の人が書いたと思われる地元グルメ紹介ファイルがありました。独特の筆文字で綴られた手作りのガイド本でした。店のチョイスは甘いもの屋などが多く、女性による執筆なのでしょうか。その他古い食堂や洋食店の紹介もあって、浜田に1日いられるならメモを取って、まわってみたいほどでした。壁際はギャラリースペースになっており、町のあちこちを写したスナップ写真が飾られています。ちょっとした町の情報案内所のようでした。
 カウンターには常連と見られるお客さんが座り、マスターらと朝の時間をゆったりと楽しんでいました。これがこの店の毎朝の風景なんだろうな、と思いつつ、慌しく店を後にしました。

 今思うと、店名はなぜティーパーラーなんだろう?単純に日東紅茶と頭に付くから?
 東京・日比谷には「日東コーナーハウス」という名の老舗レストラン喫茶がありますが、日東紅茶の普及事業のひとつとして、「日東」の屋号を付けた喫茶室経営を展開させていた時期があったのでしょうか?

モーニングはA(卵、トースト、飲み物)450円、B(トースト、目玉焼き、サラダ、飲み物)550円の2種類がありました。日曜も朝から営業していました。


喫茶パール 新潟県長岡市(2011年9月)

 b0158023_12171558.jpg乗換のため、越後湯沢のホームに降りると、おなじみのアナウンスが流れてきました。「乗換の方はお急ぎくださ~い!」どうやらまた、「はくたか」が遅れていたもよう。乗り継ぎの「とき」は、また待たされているのだろうな。
 鈍行で1時間半近くかけ、長岡駅に着きました。観光の後、時間が余ったため喫茶店探しをしました。時間のゆるす限り何軒かはしごしましたが、外観に最もインパクトを受けたのがこちらの店でした。
 駅前アーケードの裏に店はありました。鉄製のプレートには「純喫茶パール」と書いてあります。石材で覆われた外壁は重厚な雰囲気でした。
 店内は外観と違って柔らかな雰囲気でした。壁には花の写真が掛けられ、テーブルにも花が。椅子にはざぶとんが敷いてあります。そうか、店主が女性の方だからかな。
 訪れた日は残暑が厳しかったのですが、店内の片隅に置きっぱなしのストーブがありました。北国の秋は短く、冬は長いのだろうなあと想像してみました。
 午後1時までモーニングサービスをやっているせいか、お昼が近いのにトーストやサラダを食べているお客さんがいて、マイペースな感じでした。どうぞ、ごゆっくりと言われて、旅先にもかかわらず、周りのペースに合わせてくつろいでしまいました。

コーヒー 400円

喫茶マツ 茨城県石岡市 (2010年12月)

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  用事があって石岡まで行くことになりました。せっかく遠出するのだからネットで下調べすると、観光協会のホームページに看板建築の街並みが紹介されています。ギリシア風の外壁に店内は日本風の和洋折衷で、アンバランスな雰囲気です。その建築様式の建物の中に、「四季」という喫茶店があるのを知り、行くことに決めました。
 石岡駅前からは昔ながらの商店が軒を連ねていました。食堂に蕎麦屋、薬屋に時計店、おもちゃ店・・・。通りを歩いていると2階建の喫茶店がありました。大きな建物です。まるで「建築写真文庫」とか、古い喫茶店の写真で目にする大型喫茶店の風貌のようでした。こんな大型店が今でもあるのだなあ。
 店内は半地下、1階、2階席と3フロアに分かれていました。2階席への階段にはロープが張られていましたが、昔から内装を変えることなく営業を続けてきたように思われました。
 椅子とテーブルが整然と並び、団体客にも対応できそうな席数です。地下1階の席に座りました。壁の石造りのあしらいはごくシンプルでした。これまで訪れた大型店にありがちな派手な装飾物や置物はなく、観葉植物が飾られていました。
 ちょうどお昼時で周囲のお客さんはランチの人ばかりでしたが、店内が広いので、飲み物だけでも気兼ねせず過ごせました。コーヒーにはおせんべいやチョコなどのお茶請けが出てきて、意外にも家庭的です。と思っていたら、実際のところ家族経営のようで、店の方の子どもさんが店内の片すみで遊んでいました。
 
コーヒー 400円
9時30分~夜7時までの営業。日曜休。
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# by matsutakekissa | 2011-12-03 21:28 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

思いつき

 この秋、神戸に行ってきました。10年ほど前に住んでいたこともあって、良くも悪くも思い入れの深い場所です。当時は本当に限られた場所にしか足を向けませんでした。今思うと、勿体ないことをしたものです。
 特に新開地や長田あたりは「あの辺はガラが良くないから、あんまりうろうろせんほうがええよ」と、友人からよく釘を刺されました。他人のせいにしちゃいけませんが、新開地や湊川公園周辺は当時の勤め先からも近かったのに、ほとんど足を向けることもありませんでした。
 しかし、今となっては躊躇する理由もありません。あちらには漫画家水木しげるのペンネームの由来となった水木通という町名があるのだし、ようやく行ってみようという気持ちになりました。
 新開地のメーンストリートはきれいに舗装されてはいましたが、人通りは少なくがらんとしていました。ぞろぞろと競艇に向かうオジサンたちの列が続いているくらい。横断歩道には交通整理の人が数人配置されているのですが、人出のわりに大げさというか、やや、ものものしい雰囲気に感じられました。

 せっかくここまで来たので、新開地の老舗喫茶「エデン」に行きました。
 一見さんばっかりでざわついた雰囲気の店を想像していましたが、実際に見たのは常連さんがくつろぎ、会話する、どの喫茶店にもあるおなじみの風景でした。有名店というのは、あくまでも第三者的な評価であり、百聞は一見に如かずであることに、遅ればせながらようやく気付かされました。
 船室に似せて作られたという凝った内装も、創業祝い(たぶん)の鏡の市内局番がひとケタなのも、わざわざ見に行く価値のある店だと思いますが、それに加えてすばらしかったのは、マスターの客あしらいのうまさでした。
 マスターは想像していたより意外と若い方ですが、ご自身の両親以上の齢のお客さんを相手にしていたかと思えば、店に似つかわしくない雰囲気ばりばりの余所者の自分にも、合間合間に話しかけてくれ、誰にとっても居心地のよい空間を創り出す人柄のあたたかさがありました。
 ここをきっかけに、新開地や湊川公園近辺の喫茶店を何軒かはしごしました。パチンコ開店待ちの客が集う「ベラミ」、「コーヒ」と大書した看板が目立つ「小町」、おしぼりとお冷とホワイトパピロが同時に出てきて食堂みたいにだだっ広い「ベニス」など、どの店もそれぞれの個性があり、地元の人に慕われていました。
 
 1年半後、再び新開地を訪れました。この日の目的は入江近くにある喫茶「思いつき」を訪ねることでした。昨年訪れた「エデン」では、神戸の飲食店を紹介した「神戸ぶらり下町グルメ」*という本を拝見したのですが、読んでいて最も印象に残ったのがこちらのお店でした。
 本には文字通り“思いつき”で始めた四人姉妹の喫茶店という紹介とともに店内奥で並んで写る写真が掲載されていました。近隣で働く人たちのためのざっかけない雰囲気の店だとか、海近くという立地条件にも惹かれました。b0158023_21155550.jpg
 阪神高速の橋げたの下を通り過ぎ、陸橋を渡っていくと雰囲気が徐々に変わってきました。船工具という看板のかかった工場が数軒ありましたが、意外にも町なかは眠ったように静かです。
 看板が出ていなければ民家として通り過ぎてしまうようなひっそりとした外観でした。
 そっとドアを開けると、おばあさん2人がテレビを観ていて、このお2人が店の方たちでした。
 店中央の大きなテーブルを勧められましたが、窓際のつくりつけのテーブルのある席を希望して座りました。昔の駅の待合室の椅子に座ったような感覚で、反対側の窓ぎわにすえ付けられた大きな液晶テレビを観賞する格好となりました。デラックスな感じ。
 椅子にしばらく座っていると、床の部分は入口に向かってなだらかな傾斜になっていることに気付きました。この理由について伺うと、掃除のとき水はけがよくなるように、つまり「楽をするため」なんだそう。

 本の掲載を見てこちらへ伺った旨をお伝えすると、いろいろな本やテレビで紹介されたのだと、お2人はかわるがわる、店について、お話を聞かせてくださいました。
 最近うれしかったのは神戸新聞への掲載だったそうで、今では珍しくなった葉っぱの模様が入りの窓ガラスをうまく切り絵に再現してくれたと、記事の切り抜きを見せてくれました。実際の窓ガラスをよく見てみると、なるほど、凝っています。自分たちはずっとあたりまえに使っていたものだけど、珍しがってやってくる人たちは目のつけどころが違うなあ、よく気が付くとおっしゃっていました。

 建築や美術に関心のある若い人たちを連れて、お孫さんが店にやってきたこともあるのだとか。店内はもちろん、店奥のお茶の間など住居部分までお宅見学されたそうです。「建もの探訪」みたいな様子を想像しながら、さまざまな人が興味をもち、わざわざここに訪れてきているのだと感慨深い気持ちになりました。

 お茶するという本来の目的以外で訪れるお客さんも増えた近ごろですが、元々は近隣にあった造船所神戸ドックで働く工員さんたちの利用が多く、椅子に座るような暇は片時もないほどだったとか。
 肉体労働の彼らには、ケーキやお饅頭が飛ぶように売れた、と今は置き物などを入れてあるガラスケースを指さして教えてくれました。今自分が座っている窓際の席もそれぞれ、常連さんの間でお気に入りがあったらしく、背もたれに当たる部分の板は塗装が剥げていました。板張りの椅子は昔は畳敷だったそうで、造船所の人たちは作業服の油で汚れるからと、新聞紙を敷いて座っていたのだとか。「汚れても構わなかったのになあ」と言いながら、気を遣っていたお客さんのことを話してくれました。
 喫茶店を始めた頃は20代で、それから50年以上が経ったけれど、今思うとあっという間だったと、お2人は昔の思い出を神戸弁で、時には冗談を交えつつ話してくれました。

 「エデン」と「思いつき」、この2軒の店に共通していたのは、内装が船大工の設計ということと、地域の人に愛されながらも、初めての人間でも分け隔てなく迎え入れる懐の広さでした。b0158023_21152871.jpg
神戸市兵庫区西出町
コーヒー 310円
お昼過ぎ2~3時までの営業とのことでした。
*神戸の昔の面影を切り画とともに紹介するコラム(正確なタイトルは忘れました)。2010年10月か11月頃の掲載だったと思います。
**柴田真督 著「神戸ぶらり下町グルメⅡ」神戸新聞総合出版センター、2007年。
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# by matsutakekissa | 2011-11-30 08:25 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)