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喫茶店関連の本を読みました

 ご無沙汰しております。ようやく涼しくなってきて、何かに集中するにはよい季節となりました。
 今年春頃に書いた「喫茶店関連本」の記事ですが、取り上げた本は二冊とも上梓されていました。
 急いで、読書感想文を下記に書いてみます。

 泉麻人さんの「東京いつもの喫茶店」(平凡社、2013年8月刊)。版元のHPを閲覧していたのに、上梓には気づかず、秋になって、掲載店の喫茶店のひとつで、刊行を知りました。
 東京を中心とした喫茶店と街と人の姿を、街歩きを得意とする泉さんならではの文体で描かれています。街の歴史と独特の雰囲気が、喫茶店というフィルターを通して伝わってきます。泉さん個人の視点で書かれた文章のはずがいつの間にやら感情移入してしまうのは、かつて自分が訪れた時感じた街や喫茶店の印象と大きく重なっているからなのかもしれません。
 喫茶店の店主や常連客がさらりと発したことばからは、今現在を象徴した時代も語られていますが、数年後に読み直した時、今とは違った感想が出てくると感じました。
 挿絵のペン画とともに、章扉に挿入された消しゴムハンコ(?)らしきコーヒーカップやコーヒーミルのイラストも、手づくり感があってほのぼのします。
 街を歩いた時、喫茶店に入るのもいいかもしれないな、というきっかけづくりになるような本です。

 山之内遼さんの「47都道府県の純喫茶」(実業之日本社、2013年11月刊)。こちらは「純喫茶保存協会」というタイトルのブログを書いている会社員の男性の単行本です。
 いわゆる、「ブログ本」ではありません。著者の職業はコピーライター。コンパクトにまとめられた文章から、プロとしてのこだわりと喫茶店への愛情が感じられました。
 その土地で長く愛され続けてきた喫茶店を各都道府県ごとに取り上げていますが、各店舗の多様性はまるでご当地グルメのよう。
 喫茶店に付けられた名前の由来にはじまり、常連客にまつわる話、マスターやママさんの若かりし頃のエピソードなどがうまくまとめられていて、なんとなく店の雰囲気や旅情も伝わってきます。
 ブログの書籍化のお話は、以前訪れた喫茶店にて偶然店の方からお聞きしていて、上梓を楽しみにしていました。取材・執筆・撮影をおひとりで、しかも処女作とは思えないくらいにうまくこなしていると思います。
 いつか、遠くを旅する時、この本に載っている喫茶店がまだあれば訪ねてみたいものです。

 最後に、この二冊の本の共通点について。
 書名の背文字と表紙が手書き文字(泉麻人さんの本は前作「東京ふつうの喫茶店」のみ。今作はフォントです)。
 ソフトカバー、判型サイズが同じ。
 サブタイトルに「今」を感じさせる。
 著者はいずれも東京都出身、在住の男性。

 書名の文字は、やわらかい印象を与える手書き文字です。敢えて手書きにしたのは、喫茶店のもつイメージや書店店頭で目をひくようにとの意図も込められてのことでしょう。

 ソフトカバーや判型は持ち運びしやすさやコストを考えてのものだと思います。内容は濃いけど、本の重量はとても軽い。

 タイトルが目を引くためのものなら、サブタイトルはタイトルの補完と本音を表していると思います。泉麻人さんの本は「散歩の途中にホットケーキ」です。巷で流行りのホットケーキにあやかってのタイトルかと思いましたが、ホットケーキをメインにした喫茶店はわずか2店舗。たまにはホットケーキ専門店だけではなく、ホットケーキを食べに喫茶店を訪れては?というメッセージなのかもしれません。
 山之内遼さんの本は「愛すべき110軒の記録と記憶」。掲載数の多さをアピールすると同時に、「今現在」(最終確認年月が2013年9月)の喫茶店の姿であることを断り書きとしているように思われました。掲載店のいくつかは編集作業中に閉店となっています。残念ながら純喫茶は現在進行形で少しずつ消えつつある文化、期間限定の姿です。この記録を少しでも残すためのプロジェクトとして単行本化したのでしょう。

 東京在住という地の利は大きなものです。情報収集も有利です。しかし、あまりに情報が飽和しているのに辟易して、お二人とも地方の喫茶店を取り上げているのかもしれません。情報にさらされていない、魅惑の土地に期待を抱いて。
 しかし、東京在住は地方へのアクセスも有利なのです。地方出身の私としては、東京→地方、地方→東京、のアクセスは比較的簡単でも、地方→地方へのアクセスがいかに面倒かは身を持って知っています。たとえマイカーで全国各地を巡ったとしても、車では旧道や旧市街の路地に潜む喫茶店をきっとすべて探しきれません。お二人がともに地方の喫茶店を取り上げることができるのは、東京の地の利ゆえなのです。

 この後も静かな喫茶店ブームは続き、関連本の出版もあるでしょうか。楽しみです。
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by matsutakekissa | 2013-11-11 10:53 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)