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カテゴリ:旅編(東京都以外)( 19 )

 

旅先の駅前喫茶店

 一応、東京の喫茶店を優先的に書いているため、旅先などの喫茶店はおざなりになりがちです。来店後時間が経ったものもあり、外観が印象的だった3軒を忘れないうちに書き残しておきたいと思います(カッコ書き部分は来店した年と月)。

日東紅茶ティーパーラー 島根県浜田市 (2010年10月)

b0158023_21201910.jpg 昨秋、永年の夢だった鳥取・島根旅行に出かけました。米子、境港、松江を2泊3日でゆったりまわる旅のはずでしたが、結局はやや急ぎ足の旅になり、2日目は翌日の移動のため浜田に宿を取ることとなりました。
 日暮れ時、松江駅から電車に乗り込み、浜田駅に着いたのは夜も更けてからでした。移動のために泊まるだけだったため事前に下調べもしなかったのですが、駅前には古いアーケード商店街がありました。少し寂れた街並みでしたが、端から端を歩くだけでも旅情を感じました。
 翌朝、駅前に古めかしいビルがあることに初めて気がつきました。パーラーの看板が出ています。しかも営業中でした。昨晩はあれだけ歩いたのに、なぜ気付かなかったんだろう。連れ合いを説得して、30分だけということで急いで店に向かいました。
 モーニングセットの札が下がるドアを開けると、古びた内装の店内に改めて驚かされました。テーブルやイスはもちろんのこと、すべてが色あせて使い込まれた感じ。アンティークの古い電話機や陶器製のネコたちも隅っこに座っています。
 モーニングを待つ間に雑誌の棚をのぞくと、地元の人が書いたと思われる地元グルメ紹介ファイルがありました。独特の筆文字で綴られた手作りのガイド本でした。店のチョイスは甘いもの屋などが多く、女性による執筆なのでしょうか。その他古い食堂や洋食店の紹介もあって、浜田に1日いられるならメモを取って、まわってみたいほどでした。壁際はギャラリースペースになっており、町のあちこちを写したスナップ写真が飾られています。ちょっとした町の情報案内所のようでした。
 カウンターには常連と見られるお客さんが座り、マスターらと朝の時間をゆったりと楽しんでいました。これがこの店の毎朝の風景なんだろうな、と思いつつ、慌しく店を後にしました。

 今思うと、店名はなぜティーパーラーなんだろう?単純に日東紅茶と頭に付くから?
 東京・日比谷には「日東コーナーハウス」という名の老舗レストラン喫茶がありますが、日東紅茶の普及事業のひとつとして、「日東」の屋号を付けた喫茶室経営を展開させていた時期があったのでしょうか?

モーニングはA(卵、トースト、飲み物)450円、B(トースト、目玉焼き、サラダ、飲み物)550円の2種類がありました。日曜も朝から営業していました。


喫茶パール 新潟県長岡市(2011年9月)

 b0158023_12171558.jpg乗換のため、越後湯沢のホームに降りると、おなじみのアナウンスが流れてきました。「乗換の方はお急ぎくださ~い!」どうやらまた、「はくたか」が遅れていたもよう。乗り継ぎの「とき」は、また待たされているのだろうな。
 鈍行で1時間半近くかけ、長岡駅に着きました。観光の後、時間が余ったため喫茶店探しをしました。時間のゆるす限り何軒かはしごしましたが、外観に最もインパクトを受けたのがこちらの店でした。
 駅前アーケードの裏に店はありました。鉄製のプレートには「純喫茶パール」と書いてあります。石材で覆われた外壁は重厚な雰囲気でした。
 店内は外観と違って柔らかな雰囲気でした。壁には花の写真が掛けられ、テーブルにも花が。椅子にはざぶとんが敷いてあります。そうか、店主が女性の方だからかな。
 訪れた日は残暑が厳しかったのですが、店内の片隅に置きっぱなしのストーブがありました。北国の秋は短く、冬は長いのだろうなあと想像してみました。
 午後1時までモーニングサービスをやっているせいか、お昼が近いのにトーストやサラダを食べているお客さんがいて、マイペースな感じでした。どうぞ、ごゆっくりと言われて、旅先にもかかわらず、周りのペースに合わせてくつろいでしまいました。

コーヒー 400円

喫茶マツ 茨城県石岡市 (2010年12月)

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  用事があって石岡まで行くことになりました。せっかく遠出するのだからネットで下調べすると、観光協会のホームページに看板建築の街並みが紹介されています。ギリシア風の外壁に店内は日本風の和洋折衷で、アンバランスな雰囲気です。その建築様式の建物の中に、「四季」という喫茶店があるのを知り、行くことに決めました。
 石岡駅前からは昔ながらの商店が軒を連ねていました。食堂に蕎麦屋、薬屋に時計店、おもちゃ店・・・。通りを歩いていると2階建の喫茶店がありました。大きな建物です。まるで「建築写真文庫」とか、古い喫茶店の写真で目にする大型喫茶店の風貌のようでした。こんな大型店が今でもあるのだなあ。
 店内は半地下、1階、2階席と3フロアに分かれていました。2階席への階段にはロープが張られていましたが、昔から内装を変えることなく営業を続けてきたように思われました。
 椅子とテーブルが整然と並び、団体客にも対応できそうな席数です。地下1階の席に座りました。壁の石造りのあしらいはごくシンプルでした。これまで訪れた大型店にありがちな派手な装飾物や置物はなく、観葉植物が飾られていました。
 ちょうどお昼時で周囲のお客さんはランチの人ばかりでしたが、店内が広いので、飲み物だけでも気兼ねせず過ごせました。コーヒーにはおせんべいやチョコなどのお茶請けが出てきて、意外にも家庭的です。と思っていたら、実際のところ家族経営のようで、店の方の子どもさんが店内の片すみで遊んでいました。
 
コーヒー 400円
9時30分~夜7時までの営業。日曜休。
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by matsutakekissa | 2011-12-03 21:28 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

思いつき

 この秋、神戸に行ってきました。10年ほど前に住んでいたこともあって、良くも悪くも思い入れの深い場所です。当時は本当に限られた場所にしか足を向けませんでした。今思うと、勿体ないことをしたものです。
 特に新開地や長田あたりは「あの辺はガラが良くないから、あんまりうろうろせんほうがええよ」と、友人からよく釘を刺されました。他人のせいにしちゃいけませんが、新開地や湊川公園周辺は当時の勤め先からも近かったのに、ほとんど足を向けることもありませんでした。
 しかし、今となっては躊躇する理由もありません。あちらには漫画家水木しげるのペンネームの由来となった水木通という町名があるのだし、ようやく行ってみようという気持ちになりました。
 新開地のメーンストリートはきれいに舗装されてはいましたが、人通りは少なくがらんとしていました。ぞろぞろと競艇に向かうオジサンたちの列が続いているくらい。横断歩道には交通整理の人が数人配置されているのですが、人出のわりに大げさというか、やや、ものものしい雰囲気に感じられました。

 せっかくここまで来たので、新開地の老舗喫茶「エデン」に行きました。
 一見さんばっかりでざわついた雰囲気の店を想像していましたが、実際に見たのは常連さんがくつろぎ、会話する、どの喫茶店にもあるおなじみの風景でした。有名店というのは、あくまでも第三者的な評価であり、百聞は一見に如かずであることに、遅ればせながらようやく気付かされました。
 船室に似せて作られたという凝った内装も、創業祝い(たぶん)の鏡の市内局番がひとケタなのも、わざわざ見に行く価値のある店だと思いますが、それに加えてすばらしかったのは、マスターの客あしらいのうまさでした。
 マスターは想像していたより意外と若い方ですが、ご自身の両親以上の齢のお客さんを相手にしていたかと思えば、店に似つかわしくない雰囲気ばりばりの余所者の自分にも、合間合間に話しかけてくれ、誰にとっても居心地のよい空間を創り出す人柄のあたたかさがありました。
 ここをきっかけに、新開地や湊川公園近辺の喫茶店を何軒かはしごしました。パチンコ開店待ちの客が集う「ベラミ」、「コーヒ」と大書した看板が目立つ「小町」、おしぼりとお冷とホワイトパピロが同時に出てきて食堂みたいにだだっ広い「ベニス」など、どの店もそれぞれの個性があり、地元の人に慕われていました。
 
 1年半後、再び新開地を訪れました。この日の目的は入江近くにある喫茶「思いつき」を訪ねることでした。昨年訪れた「エデン」では、神戸の飲食店を紹介した「神戸ぶらり下町グルメ」*という本を拝見したのですが、読んでいて最も印象に残ったのがこちらのお店でした。
 本には文字通り“思いつき”で始めた四人姉妹の喫茶店という紹介とともに店内奥で並んで写る写真が掲載されていました。近隣で働く人たちのためのざっかけない雰囲気の店だとか、海近くという立地条件にも惹かれました。b0158023_21155550.jpg
 阪神高速の橋げたの下を通り過ぎ、陸橋を渡っていくと雰囲気が徐々に変わってきました。船工具という看板のかかった工場が数軒ありましたが、意外にも町なかは眠ったように静かです。
 看板が出ていなければ民家として通り過ぎてしまうようなひっそりとした外観でした。
 そっとドアを開けると、おばあさん2人がテレビを観ていて、このお2人が店の方たちでした。
 店中央の大きなテーブルを勧められましたが、窓際のつくりつけのテーブルのある席を希望して座りました。昔の駅の待合室の椅子に座ったような感覚で、反対側の窓ぎわにすえ付けられた大きな液晶テレビを観賞する格好となりました。デラックスな感じ。
 椅子にしばらく座っていると、床の部分は入口に向かってなだらかな傾斜になっていることに気付きました。この理由について伺うと、掃除のとき水はけがよくなるように、つまり「楽をするため」なんだそう。

 本の掲載を見てこちらへ伺った旨をお伝えすると、いろいろな本やテレビで紹介されたのだと、お2人はかわるがわる、店について、お話を聞かせてくださいました。
 最近うれしかったのは神戸新聞への掲載だったそうで、今では珍しくなった葉っぱの模様が入りの窓ガラスをうまく切り絵に再現してくれたと、記事の切り抜きを見せてくれました。実際の窓ガラスをよく見てみると、なるほど、凝っています。自分たちはずっとあたりまえに使っていたものだけど、珍しがってやってくる人たちは目のつけどころが違うなあ、よく気が付くとおっしゃっていました。

 建築や美術に関心のある若い人たちを連れて、お孫さんが店にやってきたこともあるのだとか。店内はもちろん、店奥のお茶の間など住居部分までお宅見学されたそうです。「建もの探訪」みたいな様子を想像しながら、さまざまな人が興味をもち、わざわざここに訪れてきているのだと感慨深い気持ちになりました。

 お茶するという本来の目的以外で訪れるお客さんも増えた近ごろですが、元々は近隣にあった造船所神戸ドックで働く工員さんたちの利用が多く、椅子に座るような暇は片時もないほどだったとか。
 肉体労働の彼らには、ケーキやお饅頭が飛ぶように売れた、と今は置き物などを入れてあるガラスケースを指さして教えてくれました。今自分が座っている窓際の席もそれぞれ、常連さんの間でお気に入りがあったらしく、背もたれに当たる部分の板は塗装が剥げていました。板張りの椅子は昔は畳敷だったそうで、造船所の人たちは作業服の油で汚れるからと、新聞紙を敷いて座っていたのだとか。「汚れても構わなかったのになあ」と言いながら、気を遣っていたお客さんのことを話してくれました。
 喫茶店を始めた頃は20代で、それから50年以上が経ったけれど、今思うとあっという間だったと、お2人は昔の思い出を神戸弁で、時には冗談を交えつつ話してくれました。

 「エデン」と「思いつき」、この2軒の店に共通していたのは、内装が船大工の設計ということと、地域の人に愛されながらも、初めての人間でも分け隔てなく迎え入れる懐の広さでした。b0158023_21152871.jpg
神戸市兵庫区西出町
コーヒー 310円
お昼過ぎ2~3時までの営業とのことでした。
*神戸の昔の面影を切り画とともに紹介するコラム(正確なタイトルは忘れました)。2010年10月か11月頃の掲載だったと思います。
**柴田真督 著「神戸ぶらり下町グルメⅡ」神戸新聞総合出版センター、2007年。
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by matsutakekissa | 2011-11-30 08:25 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

駅構内の喫茶店(岐阜・養老)

 ある夏の終わりに、三重県桑名市を旅行し、そのついでに養老公園内にある「養老天命反転地」を訪れました。桑名駅から養老鉄道に乗り込み、養老駅に到着すると真っ先に目についたのは「乗って守ろう養老鉄道」の大きな垂れ幕でした。ここも廃線の危機なのでしょうか。
 養老天命反転地へは、駅から歩いて10数分でした。その名前を知った最初は、何かの宗教関連施設かと思ったのですが、実際のところは屋外体験型現代アートの公園でした。パンフレットにある「もののあわれ変容器」、「極限で似るものの家」など、いわくありげな名前に心ひかれましたが、面白い形の造形物は、そこに近づいてみるだけなのに、意外と骨が折れます。その日が猛暑日だったこともありますが、足元が悪いので、うっかりすると転んでしまいます。元々の趣旨として、起伏や斜面をつくり歩きづらくしてそれを体感することでバランス感覚や方向感覚、知覚などを養う目的があるらしいのですが、開業から10年以上も経過すると、木々が大きく成長してしまい、さらにハードさを増しているようです。

 さて、養老駅構内には土産物屋兼喫茶店がありました。入り口ドアの木枠にはガラスがはめ込まれ、「千歳」と書かれており、その上には回転灯がついていました。回転灯は、中京地域を中心とした西日本の喫茶店ではよくみかけます。
 壁に貼られたプレートを見ると、この店は養老の滝近くの旅館「千歳楼」が経営しているようです(後でサイトを調べてみると、千歳楼(せんざいろう)は江戸・宝暦の創業250年の老舗旅館でした)。御品書きに養老サイダーとあったので、入ってみることにしました。
 駅にも周辺にも観光客の姿はほとんどみかけません。みな、車で訪れるのだろうか。店内の窓からは駅のホームにある、藤棚のようにあつらえた「ひょうたん棚」がありました。
歩き疲れた身体にはこのサイダーと、開け放した窓から吹いてくる風が、ありがたく感じられました。

 ずっと店に居続けるのも退屈だったので、駅の待合室で電車を待つことにしました。その数十分の間には意外にもさまざまな人間模様がありました。長距離サイクリングの最中で、道を聞きにきた若い男の子たち、本日泊まれる宿があるかどうかを聞きにきた若い2人連れ。 応対するのは、喫茶店のおかみさんと、たまたま居合わせたご近所のお母さんでした。
 自力で調べるのもいいけれど、だれかに尋ねることで、地元の人とコミュニケーションがとれ、また旅の思い出が増えるのだろうな。なんだかほのぼのとする光景でした。
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千歳
岐阜県養老郡養老町

養老サイダー 320円
ホットコーヒー 320円
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by matsutakekissa | 2011-09-16 21:40 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

 今更告白するほどのことでもありませんが、実家は石川県にあります。でもここは、故郷と呼べるほどの思い出が少ないのです。盆暮れの帰省を指折り数え、旧友との再会を心待ちにし、郷土の風土や名産品を自慢できるほど、思い入れがないのがちょっとかなしい。

 昨秋、葬儀に参列するため、久しぶりに父の故郷を訪れました。以前訪れた時も寂れた風景でしたが、駅前にあった小松製作所が取り壊されたせいか、ますますさびしい雰囲気を感じました。

 父の実家は既に売り払われてしまったので、ここに来る理由はますます少なくなりました。幼い頃は連休のたびに祖父母に会いに訪れたものですが、家庭の事情により、この20年ほどは2、3回ほどしか小松を訪れていません。そのことを考えると、いつも気が重くなります。
 帰省の時はいつも実家に直行していたため、小松駅周辺を歩くことはほとんどありません。ほとんどシャッター商店街と化した薄暗いアーケードを歩いていると、その先に明かりが見えました。

 光っていたのは喫茶店の名前が書かれた電光看板でした。車1台が駐車できそうなスペースの奥に、店の入口があります。木枠のドアから覗いた店内は、だいぶ年代が経っていそうなつくりをしていました。小松駅前にこんな店があったのか…。
 本日一番の客だったらしく、店内は暖房が効いていませんでした。天井の梁や仕切り板の木目は深いこげ茶色で、店の雰囲気は重厚でやや薄暗く感じます。ただ、窓の外が中庭になっており、淡い朝の光が差し込んできていました。
 店の壁のあちこちには絵画が掛けられています。店の隣からキャンバスがいくつものぞいて見えるので、どなたか、画を描いている方がいらっしゃるのでしょうか。店の壁のあちこちにも絵画が飾ってあります。
 「今朝は寒いですね」とお店の方がストーブを点けてくれました。しばらくして常連客が訪れると、店のおばさんの喋り方はなまりのある言葉に変わりました。かつて耳にしたことのあるなじみのある音のはずなのに、まるで異邦人になってしまったかのよう。懐かしさと疎外感が入り混じった気持ちで店をあとにしました。
 
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コーヒー 350円
石川県小松市
朝8時半頃から営業 定休は不明
※店の入り口に「ノスタルジー」カフェだか、喫茶だかのポスターが貼られていました。近年、地元のコミュニティ誌かラジオなどで紹介されたでしょうか?
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by matsutakekissa | 2011-05-18 12:53 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

 広島観光の最後に基町の団地(基町・長寿園高層アパート)を訪れました。紙屋町にある広島そごうの北方面、中央公園の奥に位置する公営(市営・県営)団地群です。
 団地の歴史や建築に関しては広島の建築物をまとめた「建築マップ」というサイトが大変詳しく、旅行の前には大いに参考にさせていただきました。ありがとうございます。そのサイトとWikipediaの説明によると、終戦後のバラック建設から発展した木造住宅密集地帯は「原爆スラム」と呼ばれており、その後相次ぐ火災から土地の再開発事業が1960年代に持ち上がり、10年の歳月をかけて団地が完成したそうです。

 低層群と高層群に分かれたアパートが建つ広い敷地内には小学校や幼稚園、交番、ショッピングセンターもあるそうなのですが、ひとつずつ確かめていたらとても時間が足りないので、興味の赴くままに歩いてみました。
 団地の数ヵ所に点在している商店街には畳屋、水周りの工事を行う工務店、学習塾、美容室、酒屋、食料品店、お惣菜屋、お好み焼き店まで実に様々な業種の店舗があって驚きました。団地の西側の太田川沿いの県営住宅の近くには銭湯「平和湯」と数店の商店が建ち並んでおり、喫茶店の看板もありました。思いもよらないことでした。b0158023_23302643.jpg
 プラスチックのドアを開けると、店内にいたのはマスターお一人。コーヒーを注文すると、おかきとお茶をサービスしてくれました。きさくな方で、突然現れた余所者の自分にも、いろいろと話しかけてくれました。
 「かなり長くやっているお店なんですか?」と尋ねると、「団地ができる前から営業しているから、45年以上やっています」とのことでした。元々マスターのお母さんが経営していたそうですが、3年前に亡くなられたため、息子さんが後を継いでいるそうです。「やめようかと思ったけれど、『やめないで』と来てくださるお客さんがいらっしゃいますから」。
 原爆資料館の展示を見て、かえって戦前の広島を全く知らなかったことに気づきました、と話すと、店の奥からわざわざ本を持ってきてくださいました。戦前・戦後の広島の写真や文章を集めた本で、マスターのお母さんの蔵書とのことでした。「みんな原爆で燃えてしまって、広島には古いものがあまりないんですよ」 マスターは戦後生まれだそうですが、被爆して戦後若くして亡くなった身内の方のことを話してくださいました。
 立ち入ったことをお聞きするきっかけをつくり、大変うかつだったことを謝りましたが、マスターは淡々とされていました。祖父母の代に戦争体験があるのと同様、広島出身の方に原爆体験があるのは当然なのですが、あまりにも想像力がありませんでした。
 店を出て太田川の河川敷を歩いていると、被爆した樹木の碑など、原爆に関連した碑をいくつか見つけました。あの時、この川で亡くなった命もたくさんあったことでしょう。夕陽色に染まる川面を見ながら、今日のことを忘れないようにと、誓いました。b0158023_23305651.jpg

コーヒー 300円
広島市中区基町
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by matsutakekissa | 2011-05-03 23:33 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

純喫茶パール

 十数年ぶりに広島に行ってきました。これまで3回ほど来たことがあるのに、修学旅行とか、次の日の移動のための宿泊のみとかばっかりで、まともに街を歩いたことがありませんでした。
ひとつだけあった目的と用事を済ませた後は、時間を自由に使うことができました。さて、どこへいこうか。広島と言えば、ガイドブックにも載っている有名な老舗喫茶店があります。駅前の「パール」です。
 店内に入ってすぐ、天井が高いなあと感じました。開業は戦後すぐのことらしいので、当時来店した人々は、今よりもっと広々とした空間を体感していたのでしょうか。
 店内は広々としていますが、TVを見るためか、お客さんの多くは入り口近くの席に固まって座っています。レジの横にはスクラッチ式の馬券も置いてありました。奥にはマンガの本がぎっしりつまった本棚もありますが、そっちはお客はまばらでした。ガラスケースには広島カープグッズが展示されていて、それを見て改めて旅に来たことをしみじみ感じました。
 まだ朝だったのでモーニングの一番安いセットを注文しましたが、周りを見渡せばホットコーヒーのお客さんばかり。コーヒーにはお菓子か何かが付いてくるみたいです。ここは中国地方だけど、中京や近畿地方の習慣がこっちまで伝播しているのだなあ。
 周りのお客さんをちらちら観察しつつ、観光ガイドと地図に目を通し、次の目的地を確認しました。有名な店だから観光客も結構多いのかと思いましたが、常連さんばかりのようです。
 帰り際、レジに立っていたおばさんに話しかけると、「つい最近、映画の撮影があったの。『悪人』の監督、ヤン監督って知ってる?」と聞かれました。
 なんでも、監督じきじきにお店にやってきて、撮影していったのだとか。
「こういうレトロな店、いまどき他にないし、つくれないでしょう」と、撮影地に選ばれたことを誇らしげに語っておられました。某企業のCMサイトにて上映の20分ほどの短編作品のようですが、「私はインターネットやらないから見れないの」と残念そうでした。4月20日から放映、ということも念を押されて言われました。
 あれから2カ月近くが経とうとしています。その日を大変楽しみにして待っていたのですが、残念ながら、企業のサイトには映画がアップされておらず、ニュースリリースにすら載っていません。おそらくは震災の影響だろうと予想されますが、もしかすると編集が遅れているのかもしれません。(多分見逃してはいないと思うのですが、そのページを単に探し出せていない可能性も…ありますが)。お蔵入りにならないことを願っています。企業ホームページでアップされ次第、当ブログにも追加情報を追記したいと思います。
 なお、映画『悪人』の監督はヤン監督ではなく、イ(李)監督でした。私はてっきり、「月はどっちにでている」の崔洋一監督かと勘違いしていたのですが、イ監督は新進気鋭の方なんですね。

コーヒー(自家焙煎) 360円 ※きちんと確認しませんでしたが、コーヒーアーンで淹れているようです。だとしたら、かなり珍しいですね。b0158023_12572219.jpg

広島市南区松原
朝7時か8時からの開店でした。日曜も営業していました。
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by matsutakekissa | 2011-04-28 12:58 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

 昨年末、鎌倉を訪れました。どの週末に訪れても混んでいる観光地。年始は初詣でとてつもなく混むだろうし、年末あたりが空いていないかなと思ったのですが、その期待は裏切られました。
 朝9時すぎ。すでに小町通りは人通りが多くなりつつあります。イワタコーヒーの前には開店待ちの人の列20名くらい。空いていれば入ってみたかったけれど。「10時開店です」の貼り紙をみて、「パチンコ屋じゃあるまいし」と、思わずぐちってしまいます。
 鶴岡八幡宮では、宮司もテキ屋も初詣の準備に追われていました。時折、「ゲコゲコゲコ!」と大きな声で鳴きながら木の幹を走るのは台湾リス。ふわふわした灰色しっぽはかわいらしいですが、近年は増えすぎて被害をもたらす厄介ものなのだそうです。

 人気のないところを目指して、まずは妙本寺、続いて鎌倉宮に向かいました。自然の多い鎌倉の街並みを歩いていると、せかせかした気分も落ち着いてきます。地元の人は道で出会うと口々に「今年はお世話になりました、来年もよろしく」と年末の挨拶を交わしていました。都内ではあまり見かけなくなった光景にほっとするものを感じました。
 鎌倉宮のそばには、すでに故人となった身内の者がお気に入りだった喫茶店が2軒あると聞いていました。「茜草屋」は完全に店仕舞いしていましたが、もう1軒は微妙な感じ。店の方が店内に入っていくのを見て、声を掛けました。すると、「コーヒーでよろしければ」とOKが出ました。
 大きな木の板が壁に貼りこまれた、どっしりとしたつくりの内装は、外観のコンクリートの白壁からは想像もつかなくて、驚きました。
 無理を言って入店したことに今更ながら恐縮していると、「たくさんいただいたの。よかったら手伝って」と、ガトー・ラスクをいただきました。その後お正月用の花を生ける準備なのか、花鋏を使う、ぱちん、ぱちんという音が聞こえてきました。
 その人はここで軽食を食べるのがお決まりだったそうで。壁には筆で書かれた「お志るこ」のメニューがぐるりと張り巡らされていました。次に来るのはいつになるかわからないけれど、今度の時はコーヒー以外も試してみたいと思いました。

コーヒー 350円
鎌倉市二階堂
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by matsutakekissa | 2010-02-18 23:02 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

 鹿児島を訪れたのは、今回が初めてでした。非常に限られた時間だったので、鹿児島の喫茶店事情がよくわかりませんでしたが、市街の中心地、天文館には創業が古い喫茶店も何軒かみかけました。ということは、街の歴史も古いということでしょうか。しかし、アーケードもお店も大部分が既にリニューアルされていて、それに合わせて喫茶店も新しくなっているところがほとんどでした(くまなく探せば少しはありそうでしたが)。

 喫茶店「門」は鹿児島中央駅すぐそばの、大通り沿いの喫茶店でした。ビルの壁の看板が遠くからでもよく目立ちます。意外にもチモトコーヒーのロゴ入り看板があったので、少し驚きました*。全く土地勘のない旅先で、見慣れたものを目にして、ほっとしてしまいました。

 この日は休日で駅前の人通りも多くありませんでしたが、ありがたいことに開店していました。老齢のマスターが1人でやられている小さな店で、赤い布張りの背もたれが高い木製イスは、喫茶店らしい色合いをしていました。壁にはコーヒーの産地の地図などを描いた銅版画が飾られています。
 そして、ブレンドとストレートコーヒー各種が書かれたメニューを見て、ようやくコーヒー専門店だということに気づきました。モーニングがあればよかったのだけれど。先客もどうやら同じ目的で入ってきた旅行者だったのか、目当ての食事ができなかったようで、ホットケーキを注文して食べるとすぐに店を出て行ってしまいました。

※東京・大田区に本社をもつ「チモトコーヒー」ですが、全国各所に支店があるそうです(会社HPより)。鹿児島にも営業拠点があるため、特に珍しくはないことがわかりました。
コーヒー 450円
鹿児島市中央町
朝10時~夜8時 土日祝 不定休

 
 
 

 
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by matsutakekissa | 2009-12-14 23:58 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

モデル

 横浜・石川町駅北口界隈。賑やかな元町通り商店街から川を越えていくと、寂れた雰囲気が際立つように感じられました。
 競馬でしくじったのか、昼間からワンカップをあおるおじさんとすれ違いました。この辺りを歩くのは地元の人ばかりでした。
 駅前という好立地に建つ喫茶店は、壁に堂々と「純喫茶モデル」と書かれています。カフェ流行りの頃に看板を「カフェ」の文字に書き替えることもなく、開店時からこのままだったのでしょうか。
 店はビルの2階にあります。階段を昇って入ってみると、意外にも広々とした空間でした。4人掛け各テーブルはボックス席のように、レンガ積みの壁で仕切られ、ゆったりしています。少しくすんだ黄色のソファ、ひまわりのような柄のタイルが貼られたテーブルが、珍しく感じられました。
 窓際の席に腰掛け、外や窓の下を見下ろすと、ちょっとした優越感を感じます。さっきまで、この窓のすぐ下にいたのに。
 駅前のまばらな人通りに比例して、この店の店内もお客がまばらで、店も人もこの広さをもてあましぎみなのが心残りでした。いい店なのに。

コーヒー 400円
神奈川県横浜市中区吉浜町
定休日不明
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by matsutakekissa | 2009-11-20 23:57 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)  

喫茶 クラウン 蕨

 大宮に行く用事のあった時、路線図を見て前々から気になっていた、「蕨」という名前の駅で途中下車しました。
 期待に反して、駅前にはスーパーとチェーン店が建ち並ぶばかりの殺風景な光景が広がっていました。それでも、駅前からまっすぐ歩いて交差点の前には、大ハコの2階建て喫茶店がそびえたっていました。店の前には、ロウ細工のメニューが飾られたショーケースもあります。
 店の外からもシャンデリアの明かりが輝くのが見えます。2階へ続くのは螺旋階段。ぜひ、2階でお茶したいと思いましたが、残念ながら営業は1階のみ。それもそのはず、ゆったりとした茶色のイスが並ぶ1階ですら、先客はたった1名でした。
 シャンデリア風のシーリングライトと、オイルヒーターのような形状のパープル・カラーのパーテーションが独特な輝きを見せていました。すっぽり腰を下ろすと、視線が低くなって、他人の気配が感じられません。ほぼ貸切状態の広い店内がもてあまし気味なのをいいことに、少し長居をしてしまいました。


コーヒー 450円
埼玉県川口市芝新町
※日 休と思われます。夜9時迄。
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by matsutakekissa | 2009-11-13 00:59 | 旅編(東京都以外) | Trackback | Comments(0)