都バスで喫茶めぐり

 すごく今さらですが、このブログ記事のすべては、とある単行本を真似て書いています。
 単行本のタイトルは『下町酒場巡礼』*1。下町酒場好きの間では(たぶん)必ず読まれているであろう一冊です。もう10年前ですが、本を初めて手に取った時の興奮は今も忘れられません。
 3人の著者の分担執筆で東京の下町、もとい場末といわれる居酒屋をめぐり歩いて紹介した本ですが、その調査スタイルは少し独特です。彼らは自分の身分を明かして取材することなく、自分の足を使ってたどり着いた居酒屋に客として入り、常連客と店主のやり取り、店の雰囲気を臨場感あふれる文章で再現しています。著者たちの旺盛な好奇心と、常連客と店に対する遠慮感のようなきまじめな姿勢も伝わってきました。
 今でこそ、「下町酒場」という言葉も市民権を得、それに付随する類書も多く出回っていますが、この本は「下町居酒屋」に付加価値をつけ、メジャーにのし上げた火付け役のひとつ、と言ってよいかもしれません。

 前置きが長くなりすぎました。10年前とは違いインターネットの情報は格段に進化し続けています。なんでも簡単に情報が入るこの時代、ついつい楽をしがちですが、なんとか『下町酒場巡礼』のような熱心さを持って無駄足を踏み、失敗し続けたうえで、自分がよいと思った店に辿り着いてみたいなあ、と思ってはじめたのが、喫茶店めぐりなのです。
 ちなみになぜ居酒屋でなく、喫茶店なのかという最も大きな理由は、場の雰囲気をぶっ壊すからです。もちろん違和感なくとけこめるタイプのヒトもいますが、おんなは居酒屋の客というより、むしろ経営側になるなあと、いろいろと失敗して現在にいたります。

 ようやく本題です。以下は『下町酒場巡礼』のコラム[都バス・「草64」]*2を真似て書いたものです。

 普段の移動手段にバスを使うことはほとんどありません。たとえ大回りで乗り継ぎがあっても電車を使うか、次の駅まで歩くという選択肢ばかり。そもそもバスを待つという気持ちの余裕がありません。
 しかし、この前バスに乗った時、これまで点と点で記憶していた場所が、路線バスだとひとつの線で結びつくことを初めて知りました。また、バスの座席からは見る車窓は歩行者の視線よりも高く、視界がひろいこともわかりました。
 
 師走の土曜日。浅草から千束にむかってぶらぶら歩き、三ノ輪駅までやってきました。今日は数カ月ぶりの自由に使える貴重な1日。さあ、これからどこへ行こう、と考えると、早速ヤボ用を思い出してしまいました。
 今年中にある買い物をしに東急ハンズにいかなければなりません。新宿、渋谷は遠いので、池袋を目指すことにしました。さて、どうやって行こうか。手っ取り早く地下鉄日比谷線に乗り、上野乗換えでJR山手線を目指そうか。それとも、鶯谷や日暮里まで歩いてしまうか。乗換えはめんどうだし、歩くのも少し疲れそうだ。
 そこへ、目の前を都バスが通り過ぎていきました。そうだ、第三の方法があった。三ノ輪駅前停留所から出ている草63系統(浅草雷門―池袋東口)のバスに乗り込みます。
 バスはすぐに大きく左折し、明治通りを進みます。荒川区役所前停留所向かいには喫茶「サン」が営業中。その斜め向かいにはツタの葉がからんだ古い喫茶店があったはず。しかし今はすっかり更地です。
 バスはしばらく明治通りを進みます。あれ、ここに喫茶店、あったっけ。珈琲専門店の大きな看板に気をとられました。バスは宮地交差点で左折。あと数百メートル明治通りを直進すれば、新三河島駅には喫茶「ナルビ」と和風喫茶「白樺」があるのに。(*草64系統を選択すれば店の前を通ります)。道灌山の商店街、水泳の北島康介選手の実家の肉屋の前を通り、バスは西日暮里へ着きました。駅近くを通ったとき、高架下近くにあった喫茶「ヒロ」が一瞬見えました。随分昔に一度行ったきりですが、シフォンケーキのおいしい店でした。
 バスは不忍通りを進みます。山の手の内側に入ると、雰囲気もがらりと変わってきました。このあたりから乗客が増えはじめました。年末でしたが、乗客はのんびりムードで車窓からウィンドウ・ショッピングを楽しんでいます。百円ショップや衣料品店の前を通ると自然と値札と商品に目がいってしまいました。少し高いところからだと、本当になんでもよく見えます。パンツの上からスカートを履いている通行人の女性を見て、後ろの座席にいた年配の男性が連れの女性(奥さんでしょうか)に「ああいう着方をすると、スカートでもあったかいんだねぇ。うまく考えたもんだ」と妙に感心していました。
 その後団子坂を抜けたところで、喫茶「ホワイト」の前を通りました。そうか、この道もバス通りだったのか。白山上交差点から巣鴨方面へ向けて、バスは右折します。この辺りは喫茶店がたくさん。珈琲豆焙煎販売の「木村コーヒー」、屋号になっている紅茶が名物の「ケニヤン」、ネコのいるジャズ喫茶「映画館」など。裏通りの商店街には「ペガサス」とか「TANTAN」。喫茶店選びにかえって迷ってしまいます。白山通り旧道から新道への分岐点へ入る直前には、コーヒー&レストラン「フェニックス」のコークのロゴ入り看板がちらりと見えました。
 巣鴨が近くなると、歩行者の数も少しずつ増えていくようでした。そしてたくさんの人が降りていきました。みんな買出しに行くのかな。人が地蔵通り商店街の方向ばかりに集中するため、大通りのほうは人通りが少なく感じます。ライトブルーのひさしがきれいな喫茶「プール」も今日は営業していました。バスは新庚申塚、西巣鴨と抜けて、ようやく左折します。掘割から旧中山道へ板橋方面に歩けば、魅力的な商店街を抜けることができます。
 ようやく池袋に近づいてきました。後方の座席を振り返ってみると、バスの乗客もまばらになっていました。所要時間40数分、ようやく池袋東口着。

 時間はかかりましたが、目的地までの行程は意外と楽しいものでした。また、時間があれば他の路線にも乗ってみたいものです。しかし、それがかなうのはいつの日になることやら・・・。

*1:『下町酒場巡礼』(大川 渉、平岡海人、宮前 栄 著、四谷ラウンド、1998年)。その後、筑摩書房から文庫化されています。
*2:コラムでは浅草から三ノ輪、滝野川を経由して池袋に到着する都バス「草64」沿線沿いの居酒屋を紹介しています。真似してみたはいいが、ひどく稚拙な文章で、真似にもなっておりません・・・。
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by matsutakekissa | 2010-03-05 00:36 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

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