戦後のたてものマニア

 ファンも多いことだし、いつか再発行されるのでは、とひそかに期待していた彰国社の『建築写真文庫』が、2009年末、再編集版として発売されました(『Showa Style―再編 建築写真文庫<商業施設>』、都築響一 編、彰国社、2009年)。
 四六判ながら4,5センチほどの厚みのある、ずっしりとした重さの本で、定価5,250円。昨年末から書店には並んでいたものの、懐具合が厳しくて、このたびようやく手に入れました。

 『建築写真文庫』は元々建築に携わる専門家のための資料として発行されました。その内容は商店建築、遊戯施設、ファサードの意匠、商店看板、学校などの公共施設や一般家庭、庭、池、プレファブ住宅に至るまで、ありとあらゆる人間の造り上げた建築物・造成物を撮って、撮って、撮りまくった、まるで蒐集の鬼のような写真集のように思えます。全145巻もあります。当時、建築・設計・デザイン関係者たちの間でこのシリーズがどのような評価を受けていたのか、専門外の私にはまったくわかりませんが、まだ人びとが生活だけでせいいっぱいだったはずの時代、よくもこれだけの巻が出されたものだ、と感心しました。
 本シリーズが発行されたのは1953年から70年にかけてで、特にシリーズ前半は50年以上も昔に発行されたことになりますが、ページをめくってみてあまり古びた印象は受けませんでした。当時の最先端を紹介するためにつくられた内容だからでしょうか。 
 ですから、建築やデザインの専門の方々だけではなく、当時流行の建築・デザインを知りたい人も、戦後の昭和の風景を懐かしみたい人にもおすすめしたい本です。本書はダイジェスト版とはいえ、各シリーズの古書を揃える手間ひまと金額を考えれば求めやすい価格と思います。
 
 個人的に気になるのはやはり喫茶店に関連するページですが、刊行当時m[洋風喫茶店]、[和風喫茶店]の2つのシリーズに分けられ、前者は6巻、後者は4巻出版されました。洒落たデザインや1棟建の豪華なビルのつくり、客席が満席になった賑やかな光景を想像して圧倒されます。設計・デザインを見せる写真集のため店員も客も写っておらず、建物の外観と内装写真ばかりですが…。たまに写っている人物は看板娘らしき店員でポーズをとっています。もしこんな女性が入口にいたら、思わず入店したくなりそうです。飲食店などの店内は時代を感じさせるレイアウトや小道具もある一方、今とさほど変わらない内装も見られ驚かされました。
 再編さんは編集者・写真家の都築響一氏によってなされました。知っている範囲で氏について説明すると、今ではすっかりいちジャンルとして定着した「珍名所・珍スポット巡り」の草分け的存在で、日本全国の珍名所を集めた写真集『珍日本紀行』(東日本編・西日本編、ちくま文庫より発行)は今は閉鎖された施設が多数あること、独断、偏見、愛に満ちた解説にはファンが多くいます。現在では旅を海外までに拡げ、珍スポット巡りをライフワークにしているそうです。

※文面に誤りや思い違いが多かったため、一部を改めました(2017年4月)。
  
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by matsutakekissa | 2010-02-15 23:14 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

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