あのビル、あの店の思い出 1

b0158023_12563168.jpg 引越し準備のため、部屋の整理をしていたら出てきた写真。撮影者は元・職場の先輩でした。写真を眺めていると、このビルに関するエピソードが思い出されました。ごくごく個人的なものですが。
 このビルの名前は、三信ビル。日比谷シャンテの向かいに建っていました。建築は昭和一ケタ代、取り壊しは2007年春でした。旧い建築に興味のある方々の間ではよく知られたビルで、取り壊しにあたっては署名運動も行われたそうです。私自身は建築には全くうといものの、使い込まれた大理石の感触と独特の装飾美が非常に好きでした。
 私がこのビルを知ったきっかけは、某ミュージシャンの映像集からでした。「あんたなら映像気に入るかもしれないから」と、友人から半ば無理やりに渡されたDVDには、今の言葉でいうところの「昭和レトロ」な映像が目につきました。月島、古い床屋、夕焼けだんだん下の商店街、有楽町の高架下。そして、ほんの一瞬でしたが、旧いビルのフロアを通り抜ける映像がとても気になってしまいました。
 その後に続く映像から想像するに、場所はおそらく有楽町近辺。そんなビル、あの場所にあっただろうか。未知への好奇心と無知に対する悔しさ半々で周辺を歩き回り、何度目かのトライでようやくその地へ辿り着いた時は嬉しかったです。
 ビルに入るなり、独特の匂いと、擦り減った石の床、そして独特の装飾が施してあるアーチが目に飛び込み、圧倒されました。陳腐な表現だけど、「時間の流れがゆるやかな空間」という言葉がぴったりです。
 1階のテナントには「ニュー・ワールド・サービス」という、変てこな名前のレストラン喫茶が入っており、店の前では店員さんが暇そうに出てきて、客足を確認して、中に戻っていくのが見えました。
 「お飲物だけでも大歓迎」そんなビラが入口に貼ってあるのを見て、かえっておじけづいてしまいました。結局、サイフに手持ちのある日に改めて来店すると、そこは、ビルへ入った時よりも、さらに時間の流れがゆったりした空間でした。
 ピアノ演奏で流れる「ほしめぐりのうた」や「うみ」などの童謡、そして、ゆっくりとした足取りで注文を取りに来る御老人のマスター。いくつか灯りの点っていないシャンデリア。スプリングがばかになって、座ったとたんに沈み込んでしまう、茶色のソファ。
 初めて訪れたにもかかわらず、すっかりリラックスしてしまいました。
 (続く)
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by matsutakekissa | 2009-09-14 12:59 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

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