脇役たちの物語

 先日、仙台に行きました。4年前、牛タン食べに立ち寄っただけの街で素敵な喫茶店に出会えたので、今回は大いに期待して訪れました。しかし、結果はさんざん。街全体がリニューアルされたような印象で、これは、と思う店には出会えませんでした。
 歩き方が悪かったのかもしれません。しかし、電車が1時間に1本しか通らない鄙びた駅前に魅力的な喫茶店がある町と比べてしまうと、この街は大きすぎ、整備されすぎていました。
 その上、立ち寄った喫茶店のTVは、なぜか柴又特集や東京のニュースばかり。いちいち首都への羨望をあおる内容に感じられ、ここは仙台なんだぞ、と心の中で叫びました。

 その夕方、帰り際に寄った書店で、こんなタイトルの本を目にしました。「東京ノスタルジック喫茶店」。仙台のガイドブックを探すつもりだったのに、書店にすら東京の本が平積みされていることに驚かされ、さっきのテレビを観て感じたことは偶然ではないように思い、その本を手に取りました。

 普段はカウンターの奥で寡黙に立ち働く店主にスポットを当て、店の歴史を語ってもらったインタビューを元にした記事が37店掲載されています。有名老舗店から、地元の名店まで、自分が行ったことのある店も数多くあり、何気なく入った店にも、それぞれの歴史と店主の思いが詰まっていたのかと、興味深く読みました。
 
 タイトルと文体から著者は年配の方かと思ったら、意外にも自分と同世代の女性でした。はっきりそうとは書いてないけど、急激に消えつつある東京都内の喫茶店を、何らかの形で残そうと使命を感じて取材を始めたという、著者の強い思いも受けました。
 写真集のように鮮やかで魅力的なグラビアが載っている喫茶店紹介の本や雑誌とは違い、1色刷りが主体の地味な本ですが、自分にとっては興味深い、貴重な内容ばかりでした。
 こういう方が、この業界にもいるのだな。後は全て塩沢さんにお任せしましょう。なんて気分にもなり、これまで自分自身が感じていた、勝手な使命感みたいな重荷を下ろした気分になりました。って、ほぼ勝手取材、勝手撮影のトーシロがよく言うよって、笑われそうですが。

『東京ノスタルジック喫茶店』 塩沢 槙 著、河出書房新社、2009年4月刊、1800円(税抜)
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by matsutakekissa | 2009-04-13 23:08 | エトセトラ | Trackback | Comments(0)  

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